研究課題/領域番号 |
15H04934
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
大辻 英吾 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20244600)
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研究分担者 |
市川 大輔 山梨大学, 総合研究部外科学講座第1教室, 教授 (20347446)
塩崎 敦 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40568086)
小松 周平 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40578978)
小西 博貴 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00448739)
有田 智洋 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00756794)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 胃十二指腸外科学 / exosome / microRNA |
研究実績の概要 |
胃癌細胞株(MKN45、MKN74、katoIII)並びに正常中皮細胞(MeT-5A)の培養上清に分泌されたexosomeを超遠心法で抽出した。このexosomeをPKH67でラベリングし、胃癌細胞株や中皮細胞、血管内皮細胞(HUVEC)に添加培養し、蛍光免疫染色法にて各種細胞株に取り込まれていることを確認した。胃癌細胞株由来exosomeを取り込んだ中皮細胞を用いて接着アッセイを施行したところ、胃癌細胞由来exosomeは中皮細胞と胃癌細胞の接着能を促進させた。また、同様に胃癌細胞由来exosomeを取り込んだ胃癌細胞株は浸潤能、遊走能が亢進した。一方で正常中皮細胞由来のexosomeを取り込ませても癌悪性度に影響は与えなかった。 胃癌細胞由来exosomeを取り込ませた中皮細胞からRNAを抽出し、PCRアレイを行ったところ、exosomeはfibronectin 1 (FN1)ならびにlaminin gamma 1 (LAMC1)の発現を亢進させた。これらの分子をターゲットとしてreal time RT-PCRで再検し、mRNAレベルでの発現亢進を確認した。また、抽出した蛋白でWestern blottingを行い、同因子が蛋白レベルでも発現亢進していることを確認した。 次に、胃癌終末期患者の悪性胸水をサンプルとし、超遠心法によりexosomeの抽出を行った。ExosomeをPKH67でラベリングし、蛍光免疫染色法にて正常中皮細胞や胃癌細胞株への取り込みを確認した。さらに悪性胸水由来exosomeを取り込んだ正常中皮細胞は、Western blottingにてFN1、LAMC1蛋白の発現が亢進し、vitro実験と同様の結果を臨床検体由来exosomeでも得られた。播種結節並びに正常腹膜組織の臨床検体を用いてFN1、LAMC1発現の発現が亢進していることを免疫染色で確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
胃癌細胞株由来のexosome添加による解析については論文発表するまでに至った。(Arita T, Otsuji E et al. Tumor exosome-mediated promotion of adhesion to mesothelial cells in gastric cancer cells. Oncotarget. 2016) 現在は大腸癌や膵癌細胞株を用いた解析を進めるとともに、exosomeを利用した治療への応用について検討を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
これまで得られた知見を元に、服水中のexosomeを阻害することで腹膜播種進展を阻害する方法を検討している。具体的には、消化器癌細胞株の培養過程において、exosome分泌促進作用を有するスフィンゴミエリナーゼをsmall interfering RNA(siRNA)を用いて阻害し、各々の細胞株の進展について増殖・浸潤・遊走・腹膜との接着に注目して各種細胞機能アッセイを行う。また、培養液中のexosomeを頻回に交換し物理的に癌由来exosomeを除去することで得られる細胞機能の変化を前述の細胞機能アッセイで確認する。exosomeの細胞内への取り込みにおける主たる径路はエンドサイトーシスであり、これを阻害するサイトカラシンDやマクロパイノサイトーシスを促進するEGFR等のレセプター阻害に着目し、取り込みを阻害することで生じる各種細胞機能の変化を同様に観察する。癌細胞自身の取り込み阻害だけでなく、正常腹膜細胞に対する取り込み阻害の結果生じる接着能の変化も含めた検討を行う。
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