研究課題/領域番号 |
15H04935
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
山本 雅一 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (60220498)
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研究分担者 |
橋本 悦子 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (40130273)
有泉 俊一 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (40277158)
徳重 克年 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (60188729)
正田 純一 筑波大学, 医学医療系, 教授 (90241827)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 非アルコール性脂肪性肝炎 / 性差 / 遺伝子改変マウス / クッパー細胞 / LPS |
研究実績の概要 |
非アルコール性脂肪性肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis : NASH)は肝硬変や肝癌に至ることもあり、予防や早期治療が重要である。さらに、女性は閉経後にNASHの罹患率が急増することが分かっている。これには女性ホルモンの分泌低下が関わっているとされているが、その詳細な機序は明らかではない。p62:Nrf2遺伝子二重欠損(DKO)マウスは、通常食飼育下で過食による肥満、インスリン抵抗性、2型糖尿病、高レプチン血症を背景にNASHを自然発症するモデルマウスである。DKOマウスのNASH発症には、Kupffer細胞,腸管上皮の各異常とそれらの連関によるLPSに対する生体の防御機構の脆弱化と炎症反応の増幅が重要な因子であることが、♂マウスを用いた解析で明らかになっているが、♀マウスの病態については解析が行われていなかった。そこで本研究では、DKOマウスのNASH病態の性差を解析し、女性ホルモンの果たす役割について検討した。体重、摂餌量,体組成の結果より、DKO♂マウスでは過食肥満が若齢時から徐々に進行するのに対し、♀マウスでは30週齢以降急激に進行した。肝臓の病理組織所見より、30週齢時点でのDKO♀マウスの脂肪沈着、炎症性細胞浸潤、線維化は♂と比べ軽度であった。肝臓の炎症性サイトカインに関して、TNFα、IL-1βの発現量は、8週齢時点で♀マウスで低値であった。一方、耐糖能、腸管透過性、血清、糞便中LPS量に関しては性差が認められなかった。以上より、DKO♀マウスのNASH病態はオスと比較し軽度であることが明らかとなった。その機序として、女性ホルモンが過食抑制や炎症抑制に働くことが考えられた。本モデルマウスはヒトと同様な性差が見られる優れたモデル動物である。性差が生じるメカニズムを解明することで、NASHの新しい治療法の開発に繋がる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非アルコール性脂肪性肝炎の発症に関して,DKO♀マウスは、♂マウスと比べ過食による肥満、肝臓の脂肪沈着、炎症性細胞浸潤、線維化が軽度であった。その背景には、女性ホルモンが過食抑制作用を介した肥満発症の抑制や、腸管から流入するLPSが惹起する炎症の抑制に関わっていることが推測された。女性ホルモンの病態に与える影響が解明されてきた.
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今後の研究の推進方策 |
p62:Nrf2遺伝子二重欠損(DKO)マウスに関するNrf2ノックインマウスを作製し,女性ホルモンが有するNrf2の賦活化作用とそれによる病態改善効果について検証して行く.
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