研究課題
拡張型心筋症などに起因する高度低左心機能症例に対して、心負荷軽減治療を行った場合に、有意の左室逆リモデリングが起こり心機能の改善を認める症例と心機能改善を認めない症例があるが、その鑑別は現時点では困難である。本研究では、心臓超音波検査で左室駆出率(LVEF)30%未満かつNYHA心機能分類ⅢあるいはⅣである重症心不全患者を対象とし、治療による逆リモデリングを予測しうる指標を探索することを目的とした。なお、虚血性心筋症とサルコイドーシス、アミロイドーシス、ミトコンドリア心筋症などの二次性心筋症症例は除外した。手術時に摘出またはカテーテルによる心筋生検を行い左室心筋の一部を採取、保存した心筋サンプルよりRNAを抽出し、Ilumina社次世代シーケンサーであるHiSeq 1500を用いてRNA-sequenceを行った。有意の左室逆リモデリング(LVEF>30%かつ治療前に比べ10%以上の改善)を認めた群(N=8)と、そうでなかった群(N=9)で比較を行った。術前の年齢、病悩機関や左室機能、血行動態指標には差を認めなかった。RNA-sequenceの結果、左室逆リモデリングを認めなかった群で有意にupregulateされている150のgeneが確認された。それらのうちもっとも差が大きかった3つのgeneはミトコンドリア呼吸鎖複合体、およびp38MAP kinase関連蛋白をcodingしアポトーシスに関連するもの、および機能不明のものであった。以上の結果から、これらの因子が重症心不全症例の左室逆リモデリング予測に有用である可能性が示唆された。
29年度が最終年度であるため、記入しない。