研究課題/領域番号 |
15H04937
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
碓氷 章彦 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (30283443)
|
研究分担者 |
荏原 充宏 国立研究開発法人物質・材料研究機構, MANA-ナノライフ分野, 准主任研究者 (10452393)
加藤 竜司 名古屋大学, 創薬科学研究科, 准教授 (50377884)
成田 裕司 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (60378221)
緒方 藍歌 名古屋大学, 医学系研究科, 研究員 (70718311)
蟹江 慧 名古屋大学, 創薬科学研究科, 助教 (80636407)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 大動脈瘤 / 間葉系幹細胞 / 抗炎症作用 / ペプチド |
研究実績の概要 |
高齢化などを背景に、大動脈瘤罹患患者数は手術件数とともに増加している。大動脈瘤に対する人工血管置換術は侵襲が大きく、近年、より低侵襲なステントグラフト内挿術が数多く行われるようになったが、適応が限られており万全とは言いがたい。一方、大動脈瘤の原因は、動脈硬化を基盤とした血管壁の慢性炎症であることが分かってきた。申請者らは、これまでに抗炎症作用や免疫抑制能を持つ間葉系幹細胞(MSC)による大動脈瘤モデルマウスの瘤径縮小効果を明らかにし、本治療法の可能性を発見した。本研究では、手術適応限界症例に対する革新的な治療法として、MSCから産生される液性因子から大動脈瘤治療に有効なタンパクを探索し、そのタンパクのアミノ酸配列をもとに設計したペプチド合成薬による新たな大動脈瘤治療法の開発を試みる。 MSCの培養上清中に含まれるタンパクの網羅的同定を行うため、培養上清を回収して濃縮・精製したのち、タンパクアレイにて解析したいところ、256個のタンパクが同定された。そのうち、抗炎症作用・免疫抑制能を持つ2つの分泌因子、PGRNとSLPIを同定した。 PGRNとSLPIのリコンビナントタンパクは、炎症性マクロファージに対し各単独添加および複合添加すると、どちらにおいても炎症性関連遺伝子発現が低下していたことから、in vivoレベルでも効果があるのかを確認する検討に移行した。大動脈瘤モデルマウスに対し、リコンビナントタンパクPGRN、SLPIのそれぞれ単独腹腔内投与または複合腹腔内投与し、継時的にエコーにて大動脈瘤最大短径を測定したところ、生理食塩水投与群に比べて、各単独投与群および複合投与群で瘤径が縮小している傾向が観察された。組織学的評価では、単独投与群および複合投与群でエラスチン構造が維持されているような所見が観察された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度において研究方式の見直しにより進捗に遅延が生じたことが、平成28年度における分泌因子PGRN、SLPIの同に対して影響を及ぼした。In vivo実験にも着手し良好な結果を得ていることから、遅れを取り戻しつつあるが、当初研究計画に比べるとやや遅れていると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでのIn vitroおよびIn vivoの結果から、リコンビナントタンパクPGRN、SLPIともに有用であることが示唆されている。今後は両因子のアミノ酸配列からペプチドを設計し、ペプチド医薬としての効果判定を行う。効果判定するにあたって、まずin vitroで、炎症性マクロファージを対象にリコンビナントタンパクPGRN、SLPIを培養培地に添加し、炎症性マクロファージが特異的に産生するNOを測定する。これをポジティブコントロールとし、設計したペプチドを用いてNO測定を行い、ペプチドの効果判定を比較検討する。もし効果が得られなかった場合は、ペプチド設計方法や残基数を可変する。効果が得られた場合は、in vivo検討に進み、大動脈瘤モデルマウスによる有効性を調べる。
|