研究課題
<腫瘍血管内皮細胞特異的発現タンパク,ビグリカンのヒト癌患者血清中濃度の解析>当研究グループが見出した腫瘍血管内皮細胞特異的な分泌タンパクであるビグリカンのヒト癌患者の血清中濃度をELISAで解析することができた.これまでに集積した肺癌患者37名と健常者8名の血清中濃度と臨床病理学的因子の解析を行った.すでに解析していたマウス異種移植腫瘍モデルで得られた結果と矛盾のない結果が得られた.マウスでは担癌状態で血清中ビグリカン濃度が高く,転移能の高い腫瘍を移植したマウスで血清中ビグリカン濃度がより高かったが,肺癌患者では健常者に比べて有意に血清中ビグリカン濃度が高かった.肺癌患者の中での検討では腫瘍径や浸潤形式との相関傾向が認められた.腫瘍切片の免疫染色による検討では,肺癌腫瘍組織中の腫瘍血管内皮細胞にビグリカンの発現が認められた.血清中のビグリカン濃度と組織中の腫瘍血管内皮細胞のビグリカン発現に関連が示唆された.現在定量的な検討を行っているところである.<腫瘍血管内皮細胞特異的阻害剤スクリーニングシステムの構築>腫瘍血管内皮細胞特異的阻害剤のハイスループットスクリーニングを行うために,初代培養細胞である腫瘍血管内皮細胞とコントロールとして用いる正常血管内皮細胞の大量調整が可能な細胞株の樹立を行った.これまでに分離培養に成功したマウスおよびヒト血管内皮細胞にそれぞれSV40とhTERTを遺伝子導入して長期間の培養を行うことに成功した.
2: おおむね順調に進展している
本研究の二本柱は腫瘍血管内皮細胞特異的マーカーであるビグリカンの発現の検査系の樹立と臨床病理学的因子との相関の統計解析と腫瘍血管内皮細胞特異的阻害剤スクリーニングシステムの構築であるが,両者ともほぼ計画に沿って進めることが出来ている.
今後,肺癌検体,患者血清サンプルを増やして解析結果を強固なものとする.マウス腫瘍血管内皮細胞に続いてヒト臨床サンプルから作成した遺伝子導入不死化腫瘍血管内皮細胞株を樹立して,ハイスループットスクリーニングシステムを確立する.
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件)
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