研究課題/領域番号 |
15H04943
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
新谷 康 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (90572983)
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研究分担者 |
南 正人 大阪大学, 医学部附属病院, 准教授 (10240847)
川村 知裕 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (30528675)
奥村 明之進 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (40252647)
舟木 壮一郎 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (50464251)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 癌周囲微小環境 / 肺癌 / 上皮間葉移行 / 癌幹細胞様形質 |
研究実績の概要 |
癌細胞とその微小環境との関わりを標的とした癌治療の開発を目的とした研究を進めてきた。なかでも、上皮細胞が極性を失って運動性が亢進し間葉系の形質を獲得する上皮間葉転換EMTに注目し、これまでに、肺癌細胞株を用いて、TGF-βなどの成長因子やコラーゲンなどの細胞外基質によってEMTが誘導されることを示した。EMTによって、癌細胞は浸潤・転移能を獲得し、さらに抗癌剤や分子標的薬への耐性化を含む癌幹細胞様形質を獲得することを報告した。癌周囲微小環境の中でも、癌間質線維芽細胞CAFが癌細胞のEMT誘導に重要な役割を担っており、その相互作用にはTGF-β-IL-6シグナルが関与していた。肺癌細胞株を長期に放射線、抗癌剤や分子標的薬に暴露すると、癌細胞からのTGF-β産生が増加し、共培養によって線維芽細胞が活性化し細胞外基質やIL-6産生が増加した。このように癌細胞は周囲微小環境と相互反応することで、EMTシグナルを通して悪性化し、さらに癌幹細胞様形質を獲得することで治療抵抗性となり生存し得る。上記相互作用を制御するために、抗線維化薬(pirfenidone)や糖尿病薬(Metoformin)によるTGF-βなどの増殖因子抑制作用・抗酸化作用などの複合的な機序に注目して、癌微小環境への影響や抗癌作用について解析を行った。いずれの薬剤も、線維芽細胞から分泌されるIL-6を抑制することで、肺癌細胞におけるEMTを抑制し、抗腫瘍効果を発揮し、また動物モデルにおいても腫瘍増生抑制、さらには抗癌剤との相乗効果を認めた。CAFをはじめとする癌周囲微小環境を対象とした癌治療は耐性化しにくいと考えられ、EMTシグナルを中心としたParacrine loopを断ち切ることで腫瘍をdormancyの状態に維持するといった新しい癌治療につながる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
現在、抗線維化薬(pirfenidone)や糖尿病薬(Metoformin)といった癌周囲微小環境を制御する薬剤を探索し、①肺癌細胞株におけるEMT抑制効果、②肺癌細胞株における抗癌剤作用増強効果、③動物モデルにおいて抗腫瘍効果および抗癌剤作用増強効果を示すことができた。また、全国学会で発表を行い、論文発表を行った。 また、癌微小環境の中で、E-cadherin(EMT)を直接制御するメカニズムとして、Podocalyxin (PODXL)の関与を同定した。①PODXLをKDするとTGF-βによるEMT誘導が抑制され、過剰発現させるとEMTが誘導された。②PODXLは肺癌の浸潤部あるいは低分化な箇所で発現が見られ、 PODXL発現症例は、非発現例に比べて予後が不良であった。③臨床検体および肺癌細胞株の検討で、PODXLのプロモーターの脱メチル化が、PODXLの発現に関与していた。PODXLじは肺癌におけるEMTのKey moleculeになっている可能性がある。同研究に関しても、全国学会で発表を行い、論文発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
抗線維化薬(pirfenidone)は肺線維芽細胞に対して活性度を抑制する効果が報告されており、また癌細胞と周囲微小環境の相互作用は癌の治療標的として注目されている分野である。そこで、同一患者由来の線維芽細胞と癌間質線維芽細胞の初代培養を樹立してPFDによる変化を検討し、さらに肺癌細胞と癌間質線維芽細胞との二次元共培養モデルにPFDを作用させ、上皮-間葉の相互作用におよぼす作用を検討することで癌微小環境を標的とした癌治療への開発につなげたい。さらに、PODXLに関しては、細胞骨格との関係を検討し、EMT制御のメカニズムを明らかにし、癌におけるPODXL発現の制御法の開発を行っていく。 従来の癌治療によって癌幹細胞様形質を維持または誘導するnicheが誘導され、治療抵抗性を示す癌幹細胞が残存する可能性がある。癌細胞が癌幹細胞様形質を獲得する過程で癌間質細胞がEMTシグナルを通して重要な役割を担っているため、現在注目している癌細胞と癌間質nicheの相互作用を対象とした癌治療は治療耐性化を抑制し、新しい癌治療につながる可能性がある。
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