研究課題
本研究の目的は、申請者らが基礎原理を開発し、現在、手術用治療器として産学連携体制で開発を進めているパルスジェットメス(Acta Neurochir (Wien) 2013)に微弱衝撃波を印加することで、従来の切開、剥離作用に加え、手術摘出腔周囲に薬剤を浸潤する機能を付加することである。分担者が開発した世界最高速度画像システム、申請者らが開発した衝撃波脳損傷モデル実験系(J Neurotrauma 2011)で微弱衝撃波の中枢神経系への影響を検討した後、非臨床(動物実験)で概念実証(proof of concept: POC)を確立することである。本研究期間内では、1) 微弱衝撃波が中枢神経系に与える影響を動物生体~細胞レベルで電気生理学的、病理組織学的に明らかにする、2) 微弱衝撃波印加下における中枢神経系(脳)の切開可能な機器を試作し、従来の血管温存下の組織切開に薬剤浸潤効果が付加できることを、動物実験による非臨床レベルで概念実証(POC)を確立することを到達目標とする。平成27年度では、生物光学的・工学的観点も踏まえて微弱衝撃波が中枢神経系細胞、脳血管に与える影響を模擬モデル、細胞レベルで検討した。その結果、組織学的に微量ジェットを繰り返し注入することで液体がmm単位で浸潤する可能性が示唆された。平成28年度では、微弱衝撃波が与える影響を生体レベルで検討するとともに、微弱衝撃波の印加が可能なパルスジェットメスの試作を行った。その結果、動物実験(ブタ脳)を用いて、実際に浸潤していることを組織学的に確認した。最終年度である平成29年度では、薬液浸潤の最適化を非臨床試験で実施、パルスジェットメスで衝撃波による追加損傷を生じることなく、切除面から3 mm奥まで液体が浸潤可能、であることに関する概念実証を行う。
2: おおむね順調に進展している
本研究は平成27年度から平成29年度までの3年間で行う研究であり、2年目である平成28年も引き続き、【中枢神経系への微弱衝撃波の影響】として生物光学的・工学的観点も踏まえて微弱衝撃波が中枢神経系細胞、脳血管に与える影響を模擬モデル、細胞レベルで検討し、微弱衝撃波が与える影響を生体レベルで検討するとともに、微弱衝撃波の印加が可能なパルスジェットメスを試作し、最終年となる平成29年度にはパルスジェットメスによる脳組織切開時に微弱衝撃波により切開面周囲に薬剤浸潤効果がもたらされることを動物実験レベルで明らかにするとともに、予備実験で可能性が示唆された従来の衝撃波による一過性血管透過性変化とは異なる浸潤効果の機序解明を進める。高速度撮影を用いた可視化実験は中川(桂)(東京大学)が、模擬モデル、生体への衝撃波照射の可視化、圧測定、理論解析は大谷(東北大学流体科学研究所)が、動物実験はレーザー方式のパルスジェットメスの開発担当者の川口(東北大学病院脳神経外科)が、機器の試作は申請者が担当する。二年目である本年は、生物光学的・工学的観点も踏まえて微弱衝撃波が中枢神経系細胞、脳血管に与える影響を模擬モデル、細胞レベルで検討した。その結果、組織学的に微量ジェットを繰り返し注入することで液体がmm単位で浸潤する所見がブタ脳での実験で組織学的示されたことから申請書の内容通りに進行していると判断した。
本研究は平成27年度から平成29年度までの3年間で行う研究であり、3年目となる平成29年度は、28年度の結果を踏まえ、【微弱衝撃波印加パルスジェットメス開発】、主として生体適合性に関する検討(大谷清伸 中川敦寛 川口奉洋)、【微弱衝撃波印加パルスジェットメスによる薬剤浸潤効果の検討】を継続し、微弱衝撃波印加パルスジェットメスによる薬剤浸潤効果の検討 (中川敦寛 川口奉洋)を通じて条件の最適化を行う。実験結果を踏まえて、適宜、過去2年で実施してきた生体適合性に関する検討(大谷清伸 中川敦寛 川口奉洋)生物光学的・工学的観点も踏まえて微弱衝撃波が中枢神経系細胞、脳血管に与える影響を模擬モデル、細胞レベルでの検討を継続するとともに、微弱衝撃波が与える影響を生体レベルで検討し、微弱衝撃波印加パルスジェットメスの改良を行う。実験の工程は予定通りに推進しており、このままの研究体制で研究を継続(高速度撮影を用いた可視化実験は中川(桂)(東京大学)が、模擬モデル、生体への衝撃波照射の可視化、圧測定、理論解析は大谷(東北大学流体科学研究所)が、動物実験はレーザー方式のパルスジェットメスの開発担当者の川口と中川が実施し、パルスジェットメスによる脳組織切開時に微弱衝撃波により切開面周囲に薬剤浸潤効果がもたらされることを動物実験レベルで明らかにするとともに、薬液浸潤の最適化を非臨床試験で実施、パルスジェットメスで衝撃波による追加損傷を生じることなく、切除面から3 mm奥まで液体が浸潤可能、であることに関する概念実証を行う。
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