研究課題/領域番号 |
15H04953
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
関矢 一郎 東京医科歯科大学, 再生医療研究センター, 教授 (10345291)
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研究分担者 |
辻 邦和 東京医科歯科大学, 医歯学総合研究科, 准教授 (20323694)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 移植・再生医療 |
研究実績の概要 |
滑膜間葉系幹細胞を用いた再生医療をより多くのヒトに提供するために、アロ滑膜間葉系幹細胞の安全性を検証し、臨床応用の可能性を検討することを目的としている。平成27年度は、アロ滑膜間葉系幹細胞の特性解析、関節液に含まれる免疫細胞の解析、関節内のサイトカイン環境、関節液の免疫細胞によるアロ抗原提示の検証を実施した。滑膜間葉系幹細胞におけるHLAクラスIおよびクラスII分子の発現を調べたところ、クラスIは発現しているがクラスIIは発現していないことが分かった。拒絶反応は抗原提示細胞によるアロ抗原の提示とT細胞の活性化によって起こる免疫応答であるので、関節液に含まれる樹状細胞(DC)およびT細胞の存在比や活性化状態をフローサイトメトリーで解析した。術前の関節液にはCD4,CD8いずれのT細胞も存在し、CD8T細胞の方が多く、活性化初期マーカーのCD69を発現していた。DCはCD141+DC,CD1c+DCが存在し、前者は術後減少し(p<0.05)後者は術後増加した(p<0.01)。CD141+DCは末梢血には僅かしか存在しないが、関節液中には単核球の数%を占めるほど存在した。CD141+DCはネクローシスを起こした細胞をCD8T細胞にクロスプレゼンテーションするという報告がある。そこで、関節液の単核球と蛍光ラベルしたアロ滑膜間葉系幹細胞を共培養し、共焦点顕微鏡で観察した。その結果、生きた細胞は取り込まれなかったが、ネクローシスしたアロ滑膜間葉系幹細胞はCD141+DCに取り込まれることがわかった。また、IFN-gとIL-2の存在下で共培養すると、CD8T細胞の増殖が確認できた。これらの結果から、ネクローシスを起こしたアロ滑膜間葉系幹細胞は関節内のCD141+DCによりクロスプレゼンテーションされる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度に計画していた、1.アロ滑膜間葉系幹細胞の特性解析、2.関節液に含まれる免疫細胞の解析、3.関節内のサイトカイン環境、4.関節液の免疫細胞によるアロ抗原提示の検証は計画通り進展し、結果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
関節液に存在するCD141+DCは滑膜から由来したものと考えているが、それを明らかにするために組織の免疫染色を計画している。また、関節液の抗原提示細胞によるアロ抗原提示の検証実験では、IFN-gとIL-2の存在下ではCD8T細胞が増殖することが分かったが、CD8T細胞が活性化され、細胞障害性の反応が誘導されるかは確認していない。培養上清のgranzymeB等の定量を計画している。 また、平成28年度はin vivoの実験を計画している。まずはラットの半月板切除モデルに、シンジェニックおよびアロの滑膜間葉系幹細胞を投与し、関節内のCD8T細胞が細胞障害性のパーフォリンやグランザイムBを産生しているか、リンパ節内のDCやT細胞の局在がアロ滑膜間葉系幹細胞の投与で変化するか等を免疫組織染色で調べることを計画している。
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