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2016 年度 実績報告書

軟骨下骨の脆弱性に着目した変形性関節症発生・増悪機構の解明及び新たな治療法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 15H04955
研究機関京都大学

研究代表者

松田 秀一  京都大学, 医学研究科, 教授 (40294938)

研究分担者 伊藤 宣  京都大学, 医学研究科, 准教授 (70397537)
研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード変形性膝関節症 / 関節軟骨 / 軟骨下骨 / 骨粗鬆症 / 骨形成薬
研究実績の概要

変形性関節症は、加齢に伴い関節軟骨が変性し疼痛を伴う疾患である。近年の研究の結果から、関節周囲の骨の脆弱性及び微小骨折の発生が関節軟骨変性の進行に寄与する可能性が指摘されはじめている。本研究の目的は、動物モデルを用いて軟骨下骨の脆弱性が関節軟骨変性に与える影響、および骨形成薬の関節軟骨変性抑制効果について検討することである。
変形性膝関節症 (KOA) における軟骨下骨(SCB)の病態生理学的役割について調べる目的で、ラット脛骨SCBにおける部分損傷(SCBI; subchondral bone injury)がKOAの発症、もしくは進行に与える影響について調べた。SCBI誘導後3および6週時点で 膝関節軟骨の病理組織像を観察したが、軟骨変性の発症は確認されなかった。一方、ラットの膝内側側副靭帯切除および膝内側半月板切離し膝に不安定性を生じさせKOAを誘発する手術に加えてSCBI手術を行ったところ、軟骨変性スコアは SCB温存群に比較して、術後3週時点で悪化傾向、術後6週時点で統計学的有意に高かった。通常の荷重下ではSCBIは軟骨病変発症に直接影響しないが, 軟骨に強い負荷がかかる状態では、KOAを悪化させる要因になると考えられる。また、膝に不安定性を生じさせKOAを誘発する手術に加えてSCBI手術を行った後に、骨形成促進薬であるテリパラチドを投与する群を作成した。術後6週間テリパラチドを皮下投与した後にラットの膝を回収し、軟骨変性の状態を評価した。テリパラチド投与群では、生食投与群に比較して、統計学的に有意に軟骨変性スコアの改善を認めた。これにより、骨形成薬を投与し軟骨下骨の脆弱性の治療を行う事により、軟骨変性の進行予防を行えることを示すことができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

軟骨下骨部分損傷単独では軟骨の変性モデルを作成することが出来なかったが、手術介入による既存の膝不安定性作成モデルに軟骨下骨部分損傷を加えることにより新たな変形性膝関節症モデルを作成することができ、軟骨下骨の病態生理学的な役割を検討することが出来た。また、上記の手術介入による既存の膝不安定性作成モデルに軟骨下骨部分損傷を加えたモデルで、術後テリパラチドを投与する事により軟骨変性を軽減させる事ができ、骨形成促進薬の変形性膝関節症の治療薬としての可能性を検討する事が出来た。これらの事より、おおむね順調に進展していると考える。

今後の研究の推進方策

軟骨下骨部分損傷は、正常な膝では単独では軟骨変性発症を生じないが、メカニカルストレスが強くかかる膝では軟骨変性進行を生じさせることが示せた。軟骨下骨部分損傷は、他の要因が加わると軟骨変性進行の一要因となる可能性が考えられる。
骨粗鬆症が進行し軟骨下骨海綿骨骨梁の菲薄化や骨形成低下が強く生じた膝では、軟骨下骨部分損傷が軟骨変性進行を生じさせる一要因となるのかを検討する。
12週齢のラットに両側卵巣切除し、3カ月待機し骨粗鬆症モデルラットを作成する。このラットに軟骨下骨部分損傷を加え、術後12週後にラットの膝回収及び全血採血を行う。回収した血液を用いて、血中の骨形成マーカー・骨吸収マーカーの測定を行い、両側卵巣切除に伴う骨代謝の変化を検証する。また、回収した膝のマイクロCTの撮影を行い、3D Data analysis softwareを用いて軟骨下骨の海綿骨骨梁の微細構造の変化を各グループ間で比較する。続いて、組織切片を作成し、サフラニンO染色を行い、OARSIのCartilage degeneration scoreを用いて軟骨損傷の深度及び範囲のスコアリングを行い、軟骨下骨の形態学的変化との対比を行う。これにより、骨粗鬆症が高度に生じた膝では、軟骨下骨部分損傷が軟骨変性進行の一要因となるとの仮説の検証を行う。

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公開日: 2018-01-16  

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