研究課題
1.変異IDHの変異型毎の作用を正確に把握するために、薬剤誘導型R132C型及びR132H型IDHを導入したiPS細胞(IDH-iPSC)のクローニングを行い、変異IDHの発現量が等しいクローンを樹立した。樹立した各クローンから、側板中胚葉を経て間葉系幹細胞を、二次元誘導法を用いて神経幹細胞を誘導し、それぞれでIDHの発現が誘導可能なことを確認した。その際に変異IDHより産生される2-HGを定量し、これまでの研究の結果と同様に、MSCではR132C型がR132H型より、より多くの2-HGを産生することを確認できた。2.それぞれのIDH-iPSCより神経幹細胞を分化誘導し、変異IDH遺伝子を発現させ、軟骨及び骨関連遺伝子の発現及びヒストンメチル化の変化を解析し、間葉系幹細胞での変化と比較検討した。3.更に正確にシングルコピーの変異遺伝子の機能を解析するために、AAVS1遺伝子座に薬剤誘導型IDH遺伝子を挿入したiPS細胞(IDH-AAVS1-iPSC)の作製を試みた。しかし当初予定したベクターを用いて作製した場合は、分化誘導後の発現誘導が不能となり、サイレンシングを受けていると考えられた。そこでベクターを改変し、再度IDH-AAVS1-iPSC を作製したところ、分化誘導後も発現誘導が可能なクローンを得ることが出来た。4.in vitroでの形質転換を図るために、軟骨形成性腫瘍のゲノム解析からpassenger変異の一つであると想定される16遺伝子の機能消失変異の導入を試み、ゲノム編集技術を用いてp16遺伝子にフレームシフト変異を導入することに成功した。
2: おおむね順調に進展している
平成27年度より、正確にシングルコピーの変異遺伝子の機能を解析するために、AAVS1遺伝子座に薬剤誘導型IDH遺伝子を挿入したiPS細胞(IDH-AAVS-iPSC)の作製を試みてきた。しかし当初予定したベクターを用いて作製した場合は、分化誘導後の発現誘導が不能となり、サイレンシングを受けていると考えられた。そこで平成28年度ではベクターを改変し、再度IDH-AAVS-iPSC を作製したところ、分化誘導後も発現誘導が可能なクローンを得ることが出来た。この結果より、最終年度は予定した実験の遂行が可能であると考える。
1.細胞系譜特異的な変異IDHの作用の解析:薬剤誘導型変異IDHを導入したiPS細胞(IDH-iPSC)から、中胚葉経由の誘導法で間葉系幹細胞を、二次元培養法により神経幹細胞を分化誘導する。それぞれにおいて薬剤によりIDHの発現を誘導した後に、網羅的な遺伝子発現プロファイル及び代表的なヒストンメチル化モチーフ(H3K4me3、H3K9me3及びH3K27me3)に関する網羅的ChIPを行い、両者の結果を比較検討することで、変異IDHの細胞系譜特異的な作用を解明する。2.変異IDHの作用における2-HGの意義の解析:変異IDHの2-HG産生以外の機能を解析するために、同一細胞で変異IDHを発現させた場合と、2-HGを培地に添加した場合での細胞に対する作用を、分化能、遺伝子発現及びヒストンメチル化等の指標で評価する。3.IDH-iPSCを用いた形質転換実験:IDH-iPSCにおいて、ゲノム編集技術を用いてp16遺伝子あるいはCOL2A1遺伝子をKOし、それぞれの細胞の遺伝子発現プロファイルを解析し、parental細胞と比較検討する。そして作製した細胞の増殖能、足場依存性及び浸潤移動能等のがん細胞としての機能を評価する。次にこれらの細胞にp53遺伝子をKOあるいはp53DDを導入し、同様に遺伝子発現プロファイル及びがん形質を評価する。更にこれらの細胞をそれぞれマトリゲルに包埋した後、免疫不全マウスの大腿骨骨髄内に移植し、腫瘍形成の有無を評価する。以上の解析により軟骨形成性腫瘍における悪性度進行過程を明らかにする。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
Proc. Natl. Acad. Sci. U S A
巻: 113 ページ: 13057-13062
World J. Surg. Oncol
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