研究課題
本研究では、軟骨形成性腫瘍におけるドライバー変異である変異型IDH(isocitrate dehydrogenase)を、標的細胞と想定される間葉系間質細胞において長期間、発現させた際のエピゲノムに対する影響を解析し、軟骨形成性腫瘍の発がん過程におけるIDH変異の役割を明らかにするとともに、更に付加的変異を加えることで、発がん機構の全容を明らかにすることを目的とした。平成29年度は下記の成果を得た。1.変異IDHのエピゲノム修飾に対する作用:薬剤誘導型べクターを用いて、R132C及びR132H型変異IDHの発現を誘導可能なiPS細胞を樹立し、それぞれを中胚葉から間葉系幹細胞(iMSC)に誘導してから、変異IDHを長期間、発現維持させることに成功した。変異IDHを発現するiMSCは、対照細胞と比較して増殖能の低下を認めた。増殖がほぼ停止した段階まで、経時的に網羅的なDNAメチル化及びヒストンメチル化に関して解析を行った。2.変異IDHの分化形質に対する作用:上記のiPS細胞から誘導したiMSCを骨、軟骨及び脂肪に分化させたところ、骨髄由来間葉系幹細胞を用いて得られた結果と同様に、骨分化能が阻害されていた。3.形質転換実験:上記の薬剤誘導型変異IDH遺伝子を導入したiPS細胞において、p16遺伝子をCRSPR/Cas9システムを用いてKOすることを試みた。結果として、複数のp16+/-及びp16-/-細胞を得た。これらの細胞をin vitroにおいて長期間培養を継続し、上記1の実験と同様に、エピゲノムの網羅的解析を進めている。またそれぞれの細胞のin vitro(血清依存性及び足場依存性増殖)及びn vivo(免疫不全マウスの骨髄内に移植)での癌細胞としての形質の評価を行っている。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Pathol Int
巻: 67 ページ: 495-502
10.1111/pin.12586