研究課題/領域番号 |
15H04957
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
村瀬 剛 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (50335361)
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研究分担者 |
田中 啓之 大阪大学, 医学部附属病院, その他 (00432542)
岡田 潔 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40576279)
岡 久仁洋 大阪大学, キャンパスライフ健康支援センター, 助教 (50724085)
吉田 清志 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (50645570)
吉川 秀樹 大阪大学, 医学系研究科, 理事・副学長 (60191558)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 変形矯正 / コンピューターシミュレーション |
研究実績の概要 |
【1.創外固定・ナビゲーションシステムとの連動機能の開発】ナビゲーションが示す変形座標軸と我々が独自に開発したソフトウェアの座位軸を一致させるように改良した上で、汎用のナビゲーション装置を実際の患者データから作成した肘関節の樹脂モデルを用いて精度実験を行った。上腕骨遠位と尺骨近位の解剖学的ランドマークにはナビゲーション先端を正確に収めることの出来るマーカーを設置し、ナビゲーションが示す位置とシミュレーションソフトウェア上の位置の誤差を計測した。機器の精度や各種パラメーターを調整することで2°未満の精度を達成した。 【2.部分最小二乗回帰分析を用いた正常骨形状の予測】昨年の橈骨に引き続き、尺骨に関してもPLS回帰分析に基いた統計学的モデルを作成した。これにより、一部の骨形状から橈骨と尺骨を併せた前腕骨全体の形状予測が可能となった。 【3. 3次元動態解析技術の変形矯正シミュレーションへの応用】 【4.カスタムメイド手術ガイド設置確認のための2D/3Dレジストレーシヨン法の応用】 屍体標本前腕骨に1mm径のチタン球を金属マーカーとして埋設して、biplane透視装置を用いて仮想の前腕回旋運動を行って動画撮影した。次に前腕骨CTから作成した骨モデルと動画の一コマ一コマを濃度勾配に基いた新たな手法の2D/3Dレジストレーション法を用いることで正確な前腕回旋動態解析方法の確立を進めている。今後は本手法を変形シミュレーションとデバイスの設置位置の検証へ応用する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「1.創外固定・ナビゲーションシステムとの連動機能の開発」においては、ナビゲーションによる実用的な精度を確保することともに、シミュレーションソフトウェアとの連動機能を開発することに成功した。 「2.部分最小二乗回帰分析を用いた正常骨形状の予測」においては、橈骨と併せて尺骨の統計学的モデルを作成したことで、前腕全体の形状予測が可能となった。 「3. 3次元動態解析技術の変形矯正シミュレーションへの応用」および「4.カスタムメイド手術ガイド設置確認のための2D/3Dレジストレーシヨン法の応用」においては、尺骨のまわりを橈骨が回旋する極めてユニークで複雑な運動を行う前腕において、2D/3Dレジストレーション法による正確な3次元動態解析技術は未だ開発されていない。濃度勾配に基づくレジストレーション技術の開発が成功しつつあることで、今後のシミュレーションへのブレークスルーになると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
【1.2D/3Dレジストレーション技術を応用ガイド設置確認手法の開発】 (方法)昨年度の2D/3Dレジストレーション法によるガイド設置確認の開発を引き続き行う。カスタムガイドの既知の部位に3つ以上の1mm径のチタン球を金属マーカーとして埋設して、金属マーカーの位置と骨の3次元形状をあらかじめコンピューターに与えておくことで、透視あるいは単純X線画像から2D/3Dレジストレーションにより骨とデバイスの正確な位置関係を推定する。 【2. 非剛性モデルシミュレーションの実施】 (方法)骨関節の剛性モデルに関節運動を制御している靱帯、筋肉などの非剛性モデルを合成した正常の関節運動における軟部組織の動きを解析し、データ化する。さらに軟部組織で規定された骨関節運動を解析できるプログラムを作成する。これにより軟部組織に制動される変形骨の一期的矯正が可能かどうかをシミュレーションする。また、独自のproximity mapping技術を用いて、関節面距離にカットオフ値を設定することにより、関節面の過剰な接近、すなわち関節面にかかる応力を定量的に評価する。これらの技術により矯正後に変化する隣接関節にかかる負荷を予測し、靱帯、筋肉に既定値を与えることで矯正後の関節運動をシミュレーションする。 【2.屍体研究による軟骨解析と変形矯正シミュレーション技術及び応力解析技術への応用】 (方法)新鮮屍体上肢から得られた肘関節軟骨、手関節軟骨、肩関節軟骨を3Dスキャナーを用いてスキャンし、同部位から得られたCT画像とレジストレーション技術により重ね合わせることにより、各種X線画像検査では描出できない軟骨領域の3次元的分布を測定が可能となる。このデータをもとに、X線画像を元に行われてきたこれまでのシミュレーション手法では予測困難であった軟骨域を含めた計画を行い、その精度を術前後に比較する。
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