研究課題/領域番号 |
15H04958
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中村 憲正 大阪大学, 国際医工情報センター, 招へい教授 (50273719)
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研究分担者 |
千々松 良太 大阪大学, 医学系研究科, 特任研究員(常勤) (60803210)
名井 陽 大阪大学, 医学部附属病院, 准教授 (10263261)
藤江 裕道 首都大学東京, システムデザイン学部, 教授 (20199300)
寺村 岳士 近畿大学, 医学部附属病院, 講師 (40460901)
福田 寛二 近畿大学, 医学部, 教授 (50201744)
吉川 秀樹 大阪大学, 医学系研究科, 理事・副学長 (60191558)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | iPS細胞 / 間葉系幹細胞 / 軟骨再生 / 人工組織 |
研究実績の概要 |
H28年度の研究では、ヒトiPS細胞から神経堤を介して誘導したMSC(iNCMSC)のin vitroの解析から、ヒト骨髄由来MSCと比較して同等もしくはより高い骨分化能、軟骨分化能を有することが示唆された。iNCMSCの軟骨治療への有用性が示唆されたため、H29年度ではまず、iNCMSCから軟骨治療用の人工組織の作製に着手した。大阪大学整形外科がかねてより培ってきた細胞シート工学技術を応用し、iNCMSCを高密度培養することで十分な体積、強度を有する人工組織(iNCMSC-TEC)が、スキャフォールド等を用いることなく、作製可能であった。またこの人工組織を軟骨分化誘導条件で培養すると、軟骨様の組織を形成することも確認された。しかし、iNCMSC-TECを免疫不全ラット軟骨欠損部に移植しても軟骨の形成は起こらず、線維性組織として残存することで反って自発的修復を阻害することがわかった。残存細胞は継時的に追跡すると消失していき、Ki67などの増殖マーカーの発現も認められなかったことから腫瘍形成などはなかったと考えられた。立ち返ってin vitroでiNCMSCの軟骨分化条件を評価すると、限られた条件でのみ分化を起こすことが明らかになり、異種への移植試験では真の治療効果が測れない可能性を示唆する結果でもあると考えている。 そこで同種での試験系が必要だと考え、ヒト多能性幹細胞型の性質を有するウサギ多能性幹細胞に着目した。現在、近畿大学よりウサギES細胞由来MSC、ウサギiPS細胞由来MSCの提供を受け、それらのin vitroの解析および人工組織化を試行しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全体計画通りの進捗ではあるが、新たな実験系の確立が必要となり、方向転換を余儀なくされている。多能性幹細胞研究の不安定性を再確認する結果ではあるが、有用な知見を蓄積しつつあると自負している。他施設分担研究者もそれぞれの施設で多能性幹細胞由来MSCを樹立するなどの協力体制も充実しており、新たな多能性幹細胞由来MSCをin vivoで評価する手前まで順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト細胞をin vivoで評価する場合、免疫不全動物を使用する必要があり、自ずとマウス、ラットに限られてします。しかし、小動物では関節の組織学的、力学的性質ではヒトとは大きく異なってしまうことが軟骨再生研究のジレンマであった。一方、我々はかねてよりウサギを用いた軟骨再生試験には精通しており、マウス、ラットなどの小動物では測れない治療効果を検証できると考えている。細胞種の変更は余儀なくされるが、得られる結果の価値は高い。 ウサギ多能性幹細胞からのMSC誘導法は本研究以前から開発がされており、軟骨再生能についても有用な示唆がされている(Teramura et al, cell transplantation, 2013)。ただ同手法では発生学的な経路のコントロルはされておらず、自発的分化に基づくMSC様細胞の出現に依存しているためロット差が大きい。 これまで我々がヒトiPS細胞研究で示してきた通り、in vitroの性能評価からin vivoの修復能を予想することは難しい。そこで複数のロットのウサギ多能性幹細胞由来MSCをin vivoで評価し、治療結果の高いロット、低いロットの違いをin vitroに立ち返って詳細に解析することで、どのようなMSC様細胞を樹立することがより治療効果の高い細胞源となるのか明らかにできると考えている。
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