骨折を生じると労働生産性が長期にわたり低下し、時に高額な医療費も必要となるため社会的逸失利益が大きいが、関節リウマチ(RA)患者は一般よりもそのリスクがさらに高いとされている。本研究の目的はゲノムワイド関連解析(genome-wide association study: GWAS)による非椎体骨折発症関連遺伝子同定を出発点として、オーム解析、公共ビッグデータ解析などにより、最適なバイオマーカーを探索して非椎体骨折リスク診断モデルを構築することであり、オーダーメイド医療に向けた基盤情報の構築を目指した。今年度は2000年以来18年におよぶ骨折調査を続けているRAコホート研究を継続し、骨折データを収集するとともに、遺伝子関連解析だけでなく、転倒に寄与する因子を解析するために筋力や運動機能の解析も行った。imputation法を利用したHLA解析によりRAのサブクラスの同定を目指した解析、抗CCP抗体陽性RAにおけるHLAとリウマトイド因子の相乗効果の解析、抗核抗体を用いてRAのサブクラスの同定を目指した解析、大腿骨頭壊死症のGWAS、疾患活動性と関節破壊の関連解析、骨折に寄与する身体機能評価の解析や骨折治療に対する臨床研究も推進し、一定の成果を得た。特にimputation法を利用したHLA解析を基盤とした解析はこれまでに困難だった非古典的HLA遺伝子の解析も可能になり興味深い知見が得られている。今後RA患者における骨折に関して、遺伝子解析、運動機能解析、関節破壊との関連などさらなる研究を推進していきたいと考えている。
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