研究課題/領域番号 |
15H04966
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研究機関 | 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所) |
研究代表者 |
中村 耕三 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所, 顧問 (60126133)
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研究分担者 |
澤田 泰宏 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 運動機能系障害研究部, 研究部長 (50313135)
江面 陽一 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 准教授 (50333456)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | リハビリテーション / 運動器科学 |
研究実績の概要 |
マウス膝関節の不動化モデルの確立 本研究計画申請時には、マウス後肢の皮下にワイヤーを通し、膝関節を屈曲位で固定する手法を想定していたが、より侵襲の小さい固定法を選択すべきと考え、皮膚上でワイヤーを巻き、膝関節伸展位での固定を行うことにした。 固定中の後肢を直接観察しながら固定を微調整することができる、脱着が容易、といった利点がある方法であり、この関節固定法の開発・確立自体を論文化した(Onda et al. Muscle Nerve 2016)。 不動化によりマウス膝関節周囲組織で認められる炎症所見の検討 炎症反応制御で中心的な役割を果たす転写因子であるNF-κBの活性化状態の免疫組織科学的評価を試みた。NF-κBの核内局在やリン酸化を組織で明確に検出することはできなかったが、不動化によるNF-κBリン酸化の顕著な促進を認めた。これはマウス膝関節不動化(固定)によりNF-κB活性が促進され局所の炎症が惹起されたことを示唆する。ただし、当初の予想とは異なり不動化によるNF-κBリン酸化の促進はマクロファージではなく主に筋細胞で生じていることが分かった。ただし、マウス膝関節不動化により膝関節周囲組織でマクロファージ数の顕著な増大を認めたので、免疫組織科学的手法によりNF-κB活性の定量の感度の問題ではないかと考えている。TNF-α、MCP-1など、炎症に関与する液性因子も免疫組織科学的に検討し、発現を検出することができた。しかし、やはり定量性には限界があると思われる実験結果であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
靭帯や関節包といった実質組織よりも、組織の間質に存在する細胞、特にマクロファージで関節固定の影響が明確に認められたことは前年度報告した通りである。マクロファージを培養して、メカニカルストレス実験を行い、メカニカルストレス負荷によりマクロファージによる炎症性物質の産生が抑制されることがあるという興味深い所見と捉えている。このようにin vivoの実験で認められた現象のメカニズムをin vitroで検証できる態勢・準備が整えることができたことで、これまでの本研究の進捗状況は概ね順調と判断している。
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今後の研究の推進方策 |
(1)マウス膝関節の不動化拘縮モデルを用いた関節周囲組織の解析 免疫組織科学的手法では、特に細胞外に放出される液性因子(TNF-α、MCP-1など)の発現・活性化の定量的評価が難しいので、組織からソーティング(FACS)などで、異なる種類の細胞をそれぞれ単離し、定量的PCRなどの生化学的手法で炎症状態を解析する。 (2) 遺伝子改変マウスの作出と解析 膝関節不動化によって膝関節周囲組織で増加するマクロファージにおけるNF-κB活性促進が検出できないなど(上述)、免疫組織科学的検討における定量の感度には限界があることが分かった。そこで、NF-κB(p65サブユニット)の発現を組織特異的に欠失するマウスなど、遺伝子改変マウスを作出して、p130Casなどのメカノセンサー分子の遺伝子改変マウスと組み合わせて解析する。
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