研究課題/領域番号 |
15H04971
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
鈴木 和浩 群馬大学, 大学院医学系研究科, 教授 (80312891)
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研究分担者 |
伊藤 一人 群馬大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (00302472)
関根 芳岳 群馬大学, 大学院医学系研究科, 助教 (00516370)
松井 博 群馬大学, 重粒子線医学推進機構, 講師 (40450374)
柴田 康博 群馬大学, 医学部附属病院, 講師 (90344936)
小池 秀和 群馬大学, 医学部附属病院, 講師 (90420091)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 前立腺癌 / 脂質代謝 |
研究実績の概要 |
昨年の検討に続き、前立腺癌細胞ヌードマウスXenograftモデルから採取した腫瘍組織を用いて、組織の調整-イオン化処理-MALDIイメージングの各過程での条件設定を確認した。マトリックス溶液ImagePrep(Bruker Daltonics製)は条件をかえず,レーザー照射を200回を標準として解析した。サンプルに、ヒト前立腺癌症例で、CYP-17およびリアーゼ阻害剤治療後の前立腺癌局所増悪から経尿道的に切除術を施行した際に、臨床研究として同意を得て組織を保存したものを加えた。さらに、去勢抵抗性前立腺癌症例のサンプルも収集が進み、最終年度の解析に供することが可能となった。今回、前立腺における脂質代謝を検討する中で、in vitroおよびin vivoの検討も並行して進めてきた。HMG-CoA還元酵素阻害剤であるスタチンによって前立腺癌増殖は抑制され、背景にannexin A10の発現亢進を認めた。この分子は、S100カルシウム結合タンパクA4 (S100A4)の発現を抑制するが、S100A4が腫瘍の浸潤度や悪性度と関連し、予後不良因子として他癌種で報告されており、今回のスタチンによる一連の分子制御は前立腺癌における抗腫瘍効果の一因をなすことが示唆された。In vivoでは、前立腺肥大症組織における各種アンチアンドロゲン剤および5α還元酵素阻害剤による組織内ホルモン濃度について、脂質代謝の点から検討した。アンチアンドロゲンによる組織内テストステロンおよび自費ドロテストステロンの低下と5α還元酵素阻害剤によるジヒドロテストステロンの低下とテストステロンの増加が判明し、今後の良性組織における脂質代謝マッピングの基礎となるデータを解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前立腺癌および前立腺肥大症における脂質代謝をイメージング質量分析の手法を用いて検討しているが、動物実験モデルによる条件設定の確認およびヒト前立腺癌組織を用いての検討にシフトした。サンプルについても、去勢抵抗性前立腺癌治療薬を使用した症例の組織を臨床研究のもとで同意を得て保存したサンプルも収集している。また、脂質代謝の意義を、イメージング質量分析と合わせて、細胞レベルならびに組織レベルで検討するために、in vitroの研究で、スタチン反応性分子として、annexin A10およびS100A4といった、これまで前立腺癌では関与が明らかにされてきていない分子も同定できた。さらに、in vivoにおいて、前立腺肥大症組織内の組織内ホルモン濃度を検討し、各種治療によるホルモン動態の差も明らかにしたので、イメージング質量分析によって、組織内濃度勾配などのマッピングのベースとなる解析も行なうことができた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度として、去勢抵抗性前立腺癌組織における各種新規ホルモン剤投与後の組織を使用した検討および、診断時における病理学的悪性度との差などを検討する。保存した組織を用いた検討となるが、すでにいくつか収集ができているので、これらを使用する。また、薬剤の効果を見るために、こうした新規薬剤に抵抗性となった細胞株を樹立しているので、ヌードマウスの皮下移植モデルを使用した検討も参考とする予定である。また、コリン系、とりグリセリド系の脂質もコレステロール由来のステロイドにあわあせて検討する予定であるが、本分析機器では、これらのスキャンニングも可能とされているので、広く進めていく予定である。
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