前立腺癌および腎細胞癌の治療効果を予測できる血中バイオマーカーとしてcirculating tumor cell(CTC)およびcirculating cell-free DNA(cfDNA)に着目し、当科ですでに確立したpatient derived xenograft(PDX)を用いて開発を進めてきた。これまでにdigital PCRを用いてPDXのcfDNAから前立腺癌および腎細胞癌に特異的な遺伝子変異を同定することができた。しかし解析に必要なPDXの維持が困難なこと、わずかなcfDNAしか採取できないこと、CTCの抽出方法が確立できていないこと、経時的に繰り返し血液を採取できないことから、PDXではなく前立腺癌および腎細胞癌患者の血液で研究を進めていくことに切り替えた。前立腺癌では、cfDNA中のアンドロゲン受容体遺伝子(AR)のコピー数や変異をdigital PCRや次世代シーケンサーを用いて同定する方法を確立した。そして102症例で検討し、47例で増幅を、24例で変異を同定した。またアビラテロンにおいてARの異常(増幅または変異)が予測効果因子になりうることを示唆した(現在論文準備中)。淡明細胞腎細胞癌では、次世代シーケンサーを用いてVHL遺伝子を評価し、腫瘍組織由来のVHL変異を対応するcfDNAでも同定することができた。 一方、腎細胞癌のうち希少組織型である転座型腎癌のバイオマーカー探索を目的として、転座によって形成されたTFE3キメラ遺伝子がコードするTFE3キメラ蛋白の転写因子としての標的を網羅的に解析した。TFE3キメラ蛋白は野生型TFE3蛋白とは明らかに異なる特異的なゲノム結合様式を示し、標的遺伝子発現プロファイルを大きく変化させていた。
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