研究課題
1.父親抗原特異的Treg(PA-specific Treg)細胞の同定不育症例60例より、初診時、妊娠7週、妊娠10週、28週、36週に末梢血、分娩時には末梢血と脱落膜よりリンパ球を分離し、20例の流産例も同様にした。Treg細胞をsingle cell sortingし、TCRα、TCRβ、Foxp3のmRNA発現をRT-PCR法で増幅した。その結果、正常妊娠では妊娠7週以降では脱落膜でTCRαのクロナリティーの集積が認められ、分娩時では20~30%のTreg細胞にクロナリティ―が認められた。流産例では脱落膜でのTCRαのクロナリティ―は正常妊娠に比し低率であった。一方、末梢血ではTregのTCRクロナリティーはいづれの場合でも認めなかった。2. クローナルに増加した脱落膜Effector TregのTCRと、抗原特異性の検証クローナルに増加した脱落膜Effector TregのTCR α鎖とβ鎖のペアの発現ベクターを作成した(3症例分6種類)。 脱落膜由来TCR発現ベクターをパッケージング細胞(Phoenix A)に導入し、レトロウイルスを作成した。レトロウイルスを母体PBMCに感染させTCRを発現させた。TCR遺伝子導入効率は約30%であった。 脱落膜由来TCR導入PBMCをresponderとし、臍帯血と自身のリンパ球をstimulatorとしてリンパ球混合培養試験を行った。 3.胎盤から産生されるmicro RNAが母体リンパ球に存在することの証明母体末梢血NK細胞のmiRNA-mRNAの網羅的発現解析により母体NK細胞には胎盤由来miRNAであるC19MC miRNAが存在し、妊娠週数とともに増加した。in vitroモデルで絨毛癌細胞BeWo細胞由来のC19MC miRNAがエクソソームを介して、T細胞株であるJurkat細胞に取り込まれ、PRKG1の発現を抑制することを示した。すなわち母体免疫細胞が胎盤由来のエクソソームを介して胎盤由来miRNAを取り込み、内在遺伝子の発現を修飾していることを初めて明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
・CD4+CD25+CD127lo/-細胞として制御性T細胞を単一細胞で抽出し、mRNA発現を単一細胞毎に検出するシステムを構築した。90%の確率で単一細胞に純化したCD4+CD25+CD127lo/-から制御性T細胞の転写遺伝子であるFoxp3 mRNA mRNAが検出され、手技が確立していることを確認した。・すでに流産例10例、正常妊娠例10例の解析は終了しており、増幅したT細胞受容体(TCR)を母体末梢血リンパ球にレトロウイルスを用いて30%の高率で導入する系を確立した。その結果、正常妊娠ではTreg細胞のTCR発現に集積があったが、流産例ではなかった。・現在、これらのTCR発現細胞と臍帯血との混合リンパ球培養試験(MLR)を3例に施行した。これら集積しているTCRの一部が臍帯血上の抗原を認識していた。・胎盤から産生されるmiRNAを網羅的解析し、これら胎盤由来miRNAが母体末梢血のNK細胞に取り込まれており、PRKG1発現を抑制する事を見出した。・羊膜細胞は単球から産生されるTNFα、IL-6産生を有意に抑制し抗炎症作用がある事を見出した。
1)【父親抗原特異的Treg細胞の同定】正常例、流産例をあと10例追加し、さらに早産例、妊娠高血圧症候群について、特定のTCR収束が観察されるかを検討する。現在すでに症例を集積中である。2)【クローナルに増加した脱落膜effector Treg細胞のTCRと抗原特異性の検証】脱落膜中Tregで増加したTCRを、TCRを欠損するT細胞株のJurkatに導入し、臍帯血と第3者との混合リンパ球反応(MLR)を施行し、増加したTCRが胎児抗原を認識しているかを検討する。3)【胎盤から産生されるmicroRNAが母体リンパ球に早産する事の証明】流産で胎児染色体正常5例、胎児染色体異常5例より脱落膜中NK細胞を純化して、microRNAを網羅的に解析して胎盤由来miRNA発現に差がないかを検討する。現在、解析中である。またこれらmiRNAの遺伝子調節している遺伝子をin silicoで同定し、mRANの網羅的解析で胎盤由来miRNAの関連を証明する。4)【羊膜細胞における免疫抑制能に関する検討】臨床的にUreaplasmaと一般細菌との混合感染の際、羊水中のIL-8 値が極めて高値となる事を見出した。そこで羊膜間質細胞に、これら菌体成分を添加し、免疫を抑制するIL-10 、HLA-G、IDO発現につき検討する。
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