研究課題/領域番号 |
15H04987
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
岡野 光博 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (60304359)
|
研究分担者 |
檜垣 貴哉 岡山大学, 大学病院, 助教 (30587407)
春名 威範 岡山大学, 大学病院, 医員 (70646182)
野山 和廉 岡山大学, 大学病院, 医員 (80646183)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | スギ花粉症 / 舌下免疫療法 / 唾液 / コホート研究 / 単球 / IL-10 / 微生物 / プロテオーム |
研究実績の概要 |
当初の研究計画通り、本年度は①唾液のプロテオーム解析によるスギ花粉症に対する舌下免疫療法の治療効果関連分子の同定、および②唾液による免疫寛容の誘導メカニズムの解明を行った。まず①に対して、前向きコホート研究として「唾液解析によるスギ花粉症舌下免疫療法の効果予測因子の同定に関する研究」として学内倫理委員会に研究計画を提出し、承認された。次いで同意の得られたスギ花粉症患者約100名より、舌下免疫療法開始時、2016年スギ花粉飛散前、およびスギ花粉飛散期に唾液を採取した。同時に日本アレルギー性鼻炎標準QOL調査票および花粉飛散期のアレルギー性鼻炎治療薬の使用状況を調査した。②に対しては、本年度は唾液によるヒト末梢血単球からのIL-10産生誘導作用について検討した。ヒトボランティアより唾液および末梢血単核細胞を採取し、磁気ビーズ法にて単球を分離した。単球を種々の濃度の唾液にて刺激し、培養上清中のIL-10量をELISAにて測定した。その結果、唾液の添加は濃度依存的にヒト単球からのIL-10の産生を増強した。一方、唾液中のIL-10濃度は測定感度以下であった。30μmフィルター通過成分ではIL-10産生増強作用は維持されるものの、0.2μm通過成分ではその作用は軽減された。以上の結果より、唾液は、唾液自身あるいは唾液に含まれる0.2~30μmまでの不溶成分の作用を介して単球系細胞からのIL-10産生を誘導し、口腔の免疫寛容を誘導・維持することで、口腔内炎症の制御や舌下免疫療法の効果発現に寄与することが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究会通りに、実験が遂行できている。特に前向きコホート研究については約100例の症例をリクルートすることができ、実験計画通りである。唾液の免疫寛容誘導作用については、唾液に含まれる0.2~30μmまでの不溶成分がIL-10産生誘導に関与することが判り、新規性の高い結果を得た。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、唾液のプロテオーム解析によるスギ花粉症に対する舌下免疫療法の治療効果関連分子の同定となる。2016年のスギ花粉症の効果判定を行い、治療前に比べ花粉飛散期の総括的状態の増悪が1以下で、かつアレルギー性鼻炎治療薬(抗ヒスタミン薬や鼻噴霧用ステロイド薬など)を用いることのなかった症例を著効例、花粉飛散期の総括的状態の増悪が1以下であるものの、アレルギー性鼻炎治療薬が必要であった症例を有効例、それ以外を無効例として対象を3群に割り付ける。まず著効群および無効群の唾液を抽出し、唾液プロテオーム解析を行う。蛍光ディファレンシャル二次元電気泳動法にて、著効群で選択的に発現するスポット、あるいは無効例で選択的に発現するスポットを抽出し、質量分析計を用いて治療効果関連分子を同定する。治療前の唾液を対象とした解析を中心的に行うが、同一症例の経時的な変化も観察する。本プロテオーム解析にて同定された治療効果関連分子のスギ花粉症における機能的解析も行う。すなわち、制御性サイトカイン/制御性T細胞の誘導活性の検討、②スギ花粉特異的サイトカイン産生制御活性の検討、好塩基球活性化修飾作用の検討、ヒト鼻粘膜上皮細胞/線維芽細胞に対する作用の検討、などである。
|