研究課題
アレルゲン免疫療法は、臨床的寛解が期待できる根治的治療法である。一方、最近の報告では2年間の免疫療法では治療一年後の鼻粘膜誘発反応はプラセボと有意な差を示さない、すなわち長期寛解が誘導されなかった。このように臨床的寛解を得るには長期間の治療を要する。さらにアレルゲン免疫療法は全ての患者に有効ではない。これらを背景に、開始時に有効例あるいは無効例を予測する検討が進められている。今回の研究では、アレルゲンエキスが最初に接触する宿主因子が唾液であることから、我々は唾液を用いた効果予測法を探索した。その結果、舌下免疫療法による無症状となった、すなわち寛解が誘導された患者では、発症者と比べ治療前の唾液で誘発されるTHP-1細胞(単球系細胞株)からのIL-10産生量が有意に高かった。すなわち、治療前の唾液を用いて寛解例を予測しうる可能性が示唆された。唾液によるIL-10産生能については、純唾液ではその産生能が減弱すること、また0.2マイクロメートルでフィルター処理をしても産生能が減弱することから、唾液の不溶性成分、特に細菌叢(マイクロバイオーム)の関与がIL-10産生に関与することが示唆された。そこで我々は、唾液中のマイクロバイオームと舌下免疫療法の効果との関連を解析した。その結果、舌下免疫療法が著効した患者では、唾液中のBacteroidetes属細菌の組成率が有意に高いことが明らかとなった。以上の結果からは、唾液中のBacteroidetes属細菌がIL-10産生誘導能を有し、舌下免疫療法の有効性に関与することが示唆された。将来は、Bacteroidetes属細菌を用いた舌下免疫療法アジュバントの開発などが期待された。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Allergology International
巻: 68 ページ: 82-89
10.1016/j.alit.2018.07.008