研究課題
先天性難聴の過半数は遺伝子異常が原因である。遺伝子異常による先天性難聴の根本的治療を考えた場合、その治療時期により1)異常な表現型の出現前、2)異常な表現型の出現後の2 つに分けて考える必要がある。本研究は1)の治療を目指し、すべての内耳の原基である胎生期耳胞を治療ターゲットとし、治療手段として遺伝子治療および人工多能幹細胞(iPS 細胞)を用いた細胞治療を用い、それぞれの治療効果について検討を行う。遺伝性難聴のモデルとしては、Pendred症候群の主たる原因遺伝子であるSLC26A4 遺伝子の欠失マウスを用いる。また、治療可能域(生後いつの時期まで治療可能か)について検討するために出生直後のマウス内耳を用いて同様の検討を行う。前年度までに、SLC26A4 欠失マウス耳胞内に正常SLC26A4 遺伝子をエレクトロポレーション法にて遺伝子導入を行い、その後の形態、機能について最長12 ヶ月後まで経時的に評価を行うこととして、そのうちの胎生期18.5日、生後14日、生後30日までの蝸牛形態評価、聴覚評価を行い、蝸牛形態が正常化し、難聴発症が抑制されることを確認した。今年度は、それらの後のステージについては現在飼育し、評価を待機している状態である。さらに、iPS 細胞もしくはiPS 由来の細胞を正常マウス耳胞およびSLC26A4 欠失マウス耳胞へ移植し、細胞の生着・分化について形態、生後の内耳機能異常の有無について評価を行うこととしていたが、マウス由来のiPS細胞を正常マウス耳胞へ注入したところ、注入後2,4,7日の蝸牛において生着しなかった。
4: 遅れている
実験における人員不足およびエフォートの不足。さらに熊本地震によるマウス飼育中断、研究室の器械・器材の損傷、移転などにより研究環境が整わなかったことが挙げられる。
実験環境の整備および人員の確保と、マウスの飼育・繁殖を行い。iPS細胞の細胞移植については、胎生期内耳の分化・発生の時期に分化度を併せたiPS細胞を用いる。iPS細胞に限らず、EGFPを全身に発現するマウスを用いて耳胞を採取し、同細胞を移植し、分化度についての考察を進める。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件)
Mol Ther, Methods&Clin Dev.
巻: 3 ページ: 16055
10.1038/mtm.2016.55