研究課題/領域番号 |
15H04995
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
石橋 達朗 九州大学, 大学病院, その他 (30150428)
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研究分担者 |
池田 康博 九州大学, 大学病院, 講師 (20380389)
星野 友 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40554689)
吉田 茂生 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50363370)
中尾 新太郎 九州大学, 大学病院, 助教 (50583027)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | プラスチック抗体 / 糖尿病網膜症 |
研究実績の概要 |
テネイシンCタンパク質を中和しうる高分子ナノ粒子を同定するため、高分子ナノ粒子ライブラリーを調整した。 PDRの疾患責任分子であるペリオスチンとテネイシンCの患者硝子体中濃度は有意に相関した(p<0.01、r=0.439)が、VEGFとテネイシンCは相関がなかった(p<0.05、r=0.181)。増殖組織を伴うPDRでは、増殖組織のないPDRに比し有意にテネイシンC濃度が高値であった(P<0.05)。増殖組織の免疫染色では、テネイシンCはαSMAおよびCD34陽性細胞上のintegrinαVと共染色を認めた。また、マウスOIRモデルにおいて、テネイシンCは虚血網膜内のαSMA陽性細胞や網膜上新生血管中のαSMAおよびCD31陽性細胞と共染された。培養VSMCの低酸素暴露後3時間でテネイシンC遺伝子の発現は有意に高値を示した(P<0.05)。さらにテネイシンCは容量依存的にHRECの増殖、遊走、管腔形成を促進した。 テネイシンCは虚血網膜中の血管平滑筋や網膜新生血管の周皮細胞から産生され、integrinαV受容体を介してパラクライン的に網膜血管新生を促進する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
患者硝子体や網膜血管新生モデルを用いて、テネイシンCが網膜上増殖に促進的に作用することを確認できた。国内、国際学会で発表を行い、成果を発信した。さらにプラスチック抗体ライブラリーやROCK阻害剤の血管新生抑制効果についても順調に検討が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
(1)テネイシンC標的プラスチック抗体の調整:タンパク質認識プラスチック抗体調整法を用いて組み換えテネイシンCに強く結合するナノ粒子をスクリーニングする。 (2)ROCK阻害剤の網膜血管内皮細胞におけるoccludin,claudin-5発現への効果:培養ヒト網膜血管内皮細胞(HREC)を高血糖刺激や糖尿病網膜症患者血清、Rho activatorリゾホスファチジン酸(lysophosphatidic acid)、VEGFで刺激し、occludinやclaudin-5の発現変化をWestern blottingや蛍光抗体法を用いて評価する。さらにROCK阻害剤を前処置することによって、これら刺激によるoccludinやclaudin-5の発現の変化にどのような影響を与えるか評価する。 (3)マウスを用いた治療効果の確認とベクターの投与至適濃度の決定:マウス4週齢の片眼に、1.0x106-2.5x108 TU/mlのSIV-hPEDFを網膜下投与し、投与後4週(8週齢)までの網膜厚をOCTで経時的に評価し、投与後4週ならびに8週で眼球を摘出し、病理組織的検討を実施する。さらに、治療効果と網膜ならびに全身への影響を考慮し、ベクターの至適濃度を決定する。
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