研究課題/領域番号 |
15H04996
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
坂本 泰二 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (10235179)
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研究分担者 |
丸山 征郎 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 特任教授 (20082282)
原 博満 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (20392079)
橋口 照人 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (70250917)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 硝子体細胞 / 網膜疾患 / 脈絡膜 / 光干渉断層計 |
研究実績の概要 |
現在硝子体を治療の場とした硝子体注射が広く行われている。そこで、抗vascular endothelial growth factor (VEGF)薬としてラニビズマブ、ベバシズマブ、アフリバセプトの異なる薬剤が使われているが、それらの臨床効果は同じではない。その理由を、薬物とVEGFの接着力に求めている研究が多かったが、我々は網膜色素上皮の細胞輸送に差があるためと考えて実験を行った。生体に極めて近い極性網膜色素上皮を作成し、そのapical sideに薬物を入れて、基底膜側にどの程度の薬物が送達されるかを調べた。その結果、Fc受容体を介した細胞内輸送によりベバシズマブ、アフリバセプトが透過するのに対して、ラビニズマブは細胞間を通じて輸送されていた。一方、細胞間を輸送される場合、Fc受容体によるリサイクリングが起こるために、活性が低下していなかった。アフリバセプトが網膜色素上皮下の病変に効果があるという臨床的経験を裏付けるデータが得られた。 これまでの研究で、硝子体は網脈絡膜に影響を及ぼすが、一方網脈絡膜側からも強い影響を受けることがわかってきた。光干渉断層計(OCT)の発達に伴い脈絡膜の生体情報が得られるようになってきたので、その影響を調べるプロジェクトを開始した。しかし、脈絡膜は、網膜と異なり整然とした構造を取っておらず、正常と異常の差が明瞭ではない。そこで脈絡膜の構造を定量化するためのソフトウェア開発を行った。OCT画像をbinarizationしてそれぞれの面積を測定した。その結果、糖尿病網膜症などの病変が進むにしたがって、脈絡膜が肥厚するが、その際は血管腔、実質ともに均等に増加することがわかった。今まで多くの疾患を解析したが、実質と血管腔が同じ比率で増加するものはなく、糖尿病独特のものかもしれない。その変化のメカニズムを来年度は研究したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞実験においては、極性網膜色素上皮の作成に成功して論文化したのみならず、それを用いて臨床上の問題の解決を試みた。そこで、網膜色素上皮細胞による、薬物のコントロールについての新知見を得た。通常薬物投与の効果を見るには、薬物自体の特性、活性あるいは組織における動態にのみ注目するが、組織における薬物リサイクリングという新しい考え方を証明して、論文化も行った(Yoshihara et al. RETINA 2017)。 近年の眼科領域では、生体計測装置の発達に伴い、膨大な画像データの蓄積が行われている。質的にも量的にも、In vitro実験や動物実験では得られないものである。しかし、その解析法は限られており、抽出できる知見も少なかった。そこで我々は、本年度は脈絡膜画像の解析ソフトを開発し(特許出願中)、研究を行った。長い試行錯誤の末に、EyeGroundというものが一つ完成した。その結果、糖尿病網膜症においては、脈絡膜も特徴的な変化をすることがわかった。また、多くの網膜疾患においての変化も評価可能であった。
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今後の研究の推進方策 |
このソフトウェアを用いることで硝子体の研究が進むことが期待できるが、国内メーカーのトプコン社から本ソフトウェアをトプコン社製品に実装する提案をされており、産学連携という意味からも大きな成果が得られる見込みである。
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