研究実績の概要 |
我が国における最大の失明原因は緑内障である。特に我が国で患者数が多い正常眼圧緑内障(NTG)については、眼圧降下療法以外の治療法が求められている。本研究では既存薬も含めた神経保護薬の探索、発症予測と早期治療介入の検討を進める。またこうした研究を推進するためにも、霊長類NTGモデルを確立する目的で、遺伝子改変用のベクターの作成を終えている。さらに老齢マーモセットの非侵襲的な眼圧測定、前眼部、網膜、篩状板の観察と視機能解析を行い、NTGの自然発症個体を見出した。今年度は同個体における遺伝子探索、血液及び脳脊髄液の検査、さらにはMRIによる検討を終え、緑内障患者の特徴がいくつも再現されていることを確認済みである。また実験的なモデルとして、グルタミン酸をマーモセット眼球内に投与することによって網膜神経節細胞死を誘導し、既存薬でこれを抑制する実験に成功した。以上の実験では非侵襲的なモニタリングと組織学的な検索結果、さらに電気生理学的な所見の全てが一致しており、研究手法としても今後の治療研究に有用と考えられる。 一方、我々は成長円錐の細胞骨格を活性化するDock3が、視神経再生を促進することを報告している(Namekata et al. PNAS, 2010)。本研究ではDock3活性化と再生阻害因子の抑制を組み合わせることによって、新たな視神経再生療法に挑戦する。すでに視神経外傷後の再生線維の一部が視交叉に到達することを確認済みであり、複数の手法を合わせることで、さらなる効率化を検討中である。
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