研究課題/領域番号 |
15H05001
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
古川 洋志 北海道大学, 医学研究科, 准教授 (00399924)
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研究分担者 |
林 利彦 北海道大学, 歯学研究科, 准教授 (00432146)
舟山 恵美 北海道大学, 医学研究科, 講師 (10533630)
七戸 龍司 北海道大学, 大学病院, 医員 (30640346)
山本 有平 北海道大学, 医学研究科, 教授 (70271674)
小山 明彦 北海道大学, 大学病院, 講師 (70374486)
村尾 尚規 北海道大学, 大学病院, 助教 (90706558)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | リンパ系再構築 / リンパ系機能不全 / 悪性黒色腫 / 転移 / 循環系 / 免疫系 |
研究実績の概要 |
移植リンパ節によるリンパ系の再構築として,①循環系の回復,②免疫系の回復の検証を行っている。 平成28年度(2年目)は,②を検証するために,それぞれの動物モデルの後肢foot padにルシフェラーゼ遺伝子を導入した悪性黒色腫細胞を移植した。ルシフェラーゼアッセイを用いて,肺転移,リンパ節転移様式にグループ間で差があるかどうかについて調べた。その結果,bリンパ節切除群では肺転移,リンパ節転移がともに増加したが,cリンパ節移植群では肺転移,リンパ節転移の増加はb群に比べてわずかであり,a群に近かった。このことは,リンパ節移植によるリンパ系再構築が悪性黒色腫の肺転移,リンパ節転移の増悪を抑制したと考えられた。 移植リンパ節の機能を調べる為に,a,c群の膝窩リンパ節(センチネルリンパ節に相当する)を腫瘍移植後4,5週目に採取した。免疫組織学染色B220においてa群では,4週目と比べると5週目にB細胞の割合が増加していたが,c群ではB細胞の割合は4,5週目ではほとんど変化していなかった。このことは移植リンパ節では,抗体産生を行う体液性免疫への移行が遅れている事を示唆した。同膝窩リンパ節を用いたリアルタイムPCRの結果では,a,c群ともIL-2,IL-10,IL-12,IFN-γの値が増加しており,センチネルリンパ節内でimmuno-stimulationが起こっていることが判明した。 さらに,リンパ系再構築の程度によって免疫系の機能に差があるかどうかを間接的に検証するために,外科的リンパ節郭清の程度を段階的にわけて,悪性黒色腫の肺転移が増加するかについて検証した。その結果,郭清の程度が大きい程,肺転移は増加したという結果を得た。このことは,局所免疫機能に関わるリンパ系の破綻が大きい程,局所免疫系が機能不全の状態に陥り,その結果,腫瘍が転移しやすくなるということを示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リンパ節移植という外科的リンパ系再構築術によって循環系の回復を証明し,さらに免疫系の回復を部分的に証明する事ができた。さらに,リンパ管・リンパ節に対する手術侵襲によるリンパ系機能不全は、悪性腫瘍がその環境にあった場合、増殖能や転移能に影響を与えることが示唆された。臨床で行なわれているリンパ節郭清術などの手術侵襲の程度によって、郭清部位より末梢に腫瘍が残存した場合、腫瘍動態が異なってくることが示唆された。そのため、リンパ節郭清術後のリンパ組織再構築術が腫瘍免疫に与える有用性が示唆される結果を得た。
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今後の研究の推進方策 |
移植リンパ節の機能評価としてさらに検証する為にフローサイトメトリーを用いて,より詳細なリンパ球の動態を追跡する。免疫組織学的染色によって生じたグループ間の差についても実際の割合を算出する事で再評価する。 さらに,ホーミングしているリンパ球のリンパ節内への入り口とも言えるHEVの状態を確認する。MECA-79で免疫染色すると同時に,Western blottingでも評価する。さらに,リンパ球トラフィキングに関わるCCL21についても評価する。
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