放射線照射動物モデルの最適化を行い、放射線障害モデルマウスを確立した。ヌードマウスにおいて、5Gy、10Gy、15Gyの照射を、1から3回連日で行った。すなわち、総照射量として、5Gyから45Gyの照射を行い、最長4週間の経過を観察した。放射線照射にはX線照射装置を用いた。皮膚の急性障害は肉眼的には2週間後に現れ、総照射量が多いものほど多く見られた。15Gyを3回照射したものでは、瘢痕の形成が見られ、その創傷治癒は著明に遅延していた。創傷治癒の能力については、6mmの円形の全層皮膚欠損を作成し、シリコン製のドーナツ型スプリントで創収縮を予防して、創の上皮化を最長15日まで観察した。45Gy照射モデルでは、15日後でも創の面積は半分よりも大きい状態であった。 放射線障害部位に皮膚潰瘍を作成し、遅延した創傷治癒の治療を、脂肪移植、脂肪由来幹細胞移植、脂肪由来基質細粒移植などで、有効性と安全性を比較検討した。脂肪由来基質細粒移植では、10ml脂肪組織由来の脂肪由来基質細粒0.2mLを創の周囲4か所にそれぞれ均等に注射した。脂肪移植では、0,2mL、脂肪幹細胞では20万個を0.2mlの生理食塩水で、コントロールマウスにおいては、著明な創治癒の遅延が見られたが、脂肪移植モデル、培養ヒト脂肪幹細胞移植、ならびに、ヒト脂肪由来基質細粒移植では、その治癒遅延が改善し、非照射群と比べてそん色のない創治癒が見られた。
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