研究課題
多施設共同研究「RAGEの肺傷害マーカーとしての臨床的意義の検討―探索的研究―」における追加検討について、Neutrophil extracellular trap形成の指標として血清遊離二重鎖DNA濃度を測定したところ、術後の炎症が遷延する患者では、このクリアランスが遅延する傾向が認められ、手術翌日の血清二重鎖DNAの濃度が、手術翌日における血清クレアチニン地の上昇度との良好な相関が認められたことについて、論文発表を行った。また、東京医科歯科大学医学部附属病院における呼吸器外科手術78症例において、麻酔導入後手術開始前、手術終了直後、手術翌日の3回採血を行い、血清中の2重鎖DNA濃度を測定し、炎症性サイトカインinterleukin-6および血管内皮透過性の指標であるangiopoietin-2の測定値と比較検討した。血清dsDNA濃度の中央値(四分位範囲)は、麻酔導入後手術開始前220(174-275)ng/mL、手術終了直後214(176-271)ng/mL、手術翌日316(270-365)ng/mLとなり、手術終了後からの1日の経過で有意に上昇することが示された。この傾向は、今回調査対象となった患者が受けた3種類の術式(肺部分切除15例、肺葉切除57例、胸膜剥離手術6例)の間で同様であり、手術翌日における血清dsDNA濃度は3つの術式間で有意差がなかった。また、3つの測定点のいずれにおいても、血清interleukin-6濃度およびangiopoietin-2濃度と血清dsDNA濃度の間に有意な相関は認められなかった。今後、好中球顆粒放出のマーカーS100A12の血清濃度を測定し、血清二重鎖DNA濃度との相関について検討する。
3: やや遅れている
心臓手術における血中二重鎖DNA濃度と急性腎障害の関係に関する論文をまとめて、それを根拠に複数の臨床研究を施行する予定としていたが、論文化に遅延が生じたため、他の臨床研究の計画・実施に遅延が発生した。
心臓手術を対象とする急性腎障害の発症と血中二重鎖DNA、フローサイトメトリーを用いたNETs形成の評価の関係について、新たに前向き研究を計画し、急性腎障害発症におけるNETs形成の寄与度について、再検討を行う予定とする。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件)
Anesthesiol Res Pract
巻: 2016 ページ: 2794364
10.1155/2016/2794364