研究課題/領域番号 |
15H05005
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
松田 兼一 山梨大学, 総合研究部, 教授 (60282480)
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研究分担者 |
山本 健一郎 川崎医療福祉大学, 医療技術学部, 准教授 (00434316)
山根 隆志 神戸大学, 工学研究科, 教授 (10358278)
小久保 謙一 北里大学, 医療衛生学部, 准教授 (20287965)
森口 武史 山梨大学, 総合研究部, 講師 (60422680)
後藤 順子 山梨大学, 総合研究部, 医学研究員 (60530102)
針井 則一 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (80377522)
菅原 久徳 山梨大学, 総合研究部, 助教 (70746776)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 救命 / 救急医学 / 災害医学 / 人工臓器 / 血液浄化 / 人工腎臓 |
研究実績の概要 |
昨年度の研究実績について可搬型血液浄化装置の重要な要素である極細径化中空糸小型血液濾過器、血液浄化用低流量小型遠心ポンプ、可搬型小型血液浄化システムの3つに分けて報告する。 1.極細径化中空糸小型血液濾過器においては、より長期使用に耐えられる血液濾過器の開発に取り組み、ファイバー内径100μmで、膜面積0.5m2、ハウジングサイズ130×80×20mmの新たな極細径化中空糸小型血液濾過器の設計を行い、完成させた。 2.血液浄化用低流量小型遠心ポンプにおいては、少ない回転数でより多くの血液流量を得られるようにポンプの羽直径を30mmから34mmに拡大し、さらに内部構造を改良し、流路抵抗のより少ない遠心ポンプの設計を行った。その結果ハウジングサイズφ42×20mmの超小型血液浄化用低流量遠心ポンプを完成させた。さらにこの新しいポンプの長期耐久試験を実施し、1ヶ月間連続使用しても全く問題無いことが立証された。 3.最後にこれら新しい極細径化中空糸小型血液濾過器と血液浄化用低流量小型遠心ポンプを組み合わせた可搬型小型血液浄化システムを新たに設計し、全体の大きさ300x180x120mmのシステムを完成させた。健常ヤギにおいて、本可搬型小型血液浄化装置を用いて種々の操作条件で血液浄化実験を施行した。抗凝固剤として海外で多く使用されているクエン酸ナトリウムを用いた血液浄化実験においても血液浄化施行可能であることを実証した。また健常ヤギにおいて、抗凝固剤としてクエン酸ナトリウムを用いた血液浄化実験を施行したところ6日間全く問題無く血液浄化を長期施行できることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は極細径化中空糸小型血液濾過器、血液浄化用低流量小型遠心ポンプ、可搬型小型血液浄化システム全てにおいて改良を加え、新たな可搬型小型血液浄化システムを作成した。しかし、血液浄化開始直後に血流量が低下する現象を確認したため、装置・血液回路を分解し、詳細に検討したところ、その原因は血小板凝集による白色血栓であることが判明した。そこで血液濾過器として、従来の物と本極細径化中空糸小型血液濾過器とを、さらに血液ポンプとして、従来のローラポンプと血液浄化用低流量小型遠心ポンプとを、また抗凝固剤として、ヘパリンとクエン酸ナトリウムとを用い、それぞれクロスオーバ試験を行った。その結果、ヘパリンと血液浄化用低流量小型遠心ポンプの組み合わせでのみ白色血栓が発生することが判明した。そこで改めて、抗凝固剤をヘパリンからクエン酸ナトリウムへ変更し、健常ヤギを用いた血液浄化試験を施行したところ、血液浄化開始直後に血流量が低下する現象は認めず、6日間全く問題無く血液浄化を長期施行できることが判明した。本白色血栓はブタを用いた血液浄化実験の際には確認出来なかったため、ヤギ特有の現象で、動物種の違いによるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である今年度においては、まず本可搬型小型血液浄化システムと従来型の血液浄化システムを用いて比較血液浄化実験を行い、操作条件の変更による血液濾過器のファウリング現象について検討する。従来のシステムで生じたファウリング現象が可搬型小型血液浄化システムで生じにくいことを証明できれば、本装置の長期使用の可能性が担保されたこととなる。 次に健常ヒツジを用い、抗凝固剤としてヘパリンを用いた本装置の長期性能評価を行う予定である。さらに本実験でヘパリンを抗凝固剤として用いた際の白色血栓の発生の有無を確認し、白色血栓の発生が動物種による物なのかを検討する。また血液浄化用低流量小型遠心ポンプに表面処理等の工夫をする事で、健常ヤギを用いた血液浄化実験の際に生じた白色血栓発生予防に取り組む予定である。 更にはヒト血を用いた血液浄化実験を行い、健常ヤギを用いた際に血液浄化開始直後に認められた白色血栓の有無を確認し、本システムをヒトに用いた際の安全性を確認する予定である。 以上により、小型でかつ安全で、夜間緊急時や災害現場で使用しやすい操作性の高い可搬型小型血液浄化システムを構築し、本システムの市販に向けた最終調整を行う予定である。
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