研究課題
平成28年度は、骨芽細胞・骨細胞のリン酸イオン供与体の局所的ON-OFF機構を明らかにするために、平成29年度と2年間で検索を進めることになっている。これまでに、組織非特異型アルカリホスファターゼ(TNAP)とピロリン酸合成酵素(ENPP1)、および、Phospho1の局在を検討したところ、TNAPは前骨芽細胞と骨芽細胞、ENPP1は骨芽細胞と骨細胞に分布し、Phospho1は骨芽細胞に局在する傾向が見られた。また、ENPP1-/-マウスおよびkl/klマウスでは、骨芽細胞からの基質小胞分泌が行われているにもかかわらず、骨基質は低石灰化を示した。骨芽細胞から骨細胞への分化初期の指標であるpodoplanin(gp38 glycopotein, E11)は、埋め込まれつつある骨芽細胞・骨細胞の細胞膜上に局在していた。podoplanin陽性骨芽細胞・骨細胞は、アクチン線維が細胞膜を裏打ちするよう全周に分布するだけでなく、骨細胞に分化するとともに細胞突起の基部と思われる箇所に集積していた。このような骨芽細胞から骨細胞へと分化しつつある細胞において、TNAP、ENPP1およびPhospho1の局在は、他の骨芽細胞・骨細胞と比較して明確な違いを示さなかった。ところが、ENPP1-/-マウスおよびkl/klマウスでは、早期にpodoplanin陽性骨芽細胞が出現することが明らかとなった。ENPP1-/-マウスとkl/klマウスにおいて、基質石灰化が低下しているにも関わらず、podoplanin陽性骨芽細胞が増加したことは、骨芽細胞から骨細胞へ分化することでリン酸イオン供与体のON-OFF機構が作動するのではなく、リン酸イオン供与体の機能・作用が骨芽細胞から骨細胞への分化のON-OFFに関与する可能性があると推察された。
2: おおむね順調に進展している
骨芽細胞と骨細胞において、リン酸イオン供与に関する酵素・膜輸送体であるTNAP, ENPP1,Phospho1といった局在について明らかにしたうえで、podoplaninが骨芽細胞から骨細胞に分化しつつある細胞膜上に局在すること、その細胞におけるアクチン分布が変性していることを明らかにした。それを確認したうえで、TNAP, ENPP1, Phospho1の局在を検索したところ、骨芽細胞から骨細胞への分化によってこれらリン酸イオン供与に関する酵素・膜輸送体の分布が変化するのではなく、リン酸イオン供与に関する酵素・膜輸送体が、骨芽細胞から骨芽細胞の分化に影響を及ぼす可能性が得られている。従って、平成28年度の研究計画として、おおむね順調に進んでいるとした。
本年度は、当初の計画通り進めることとする。つまり、正常状態の野生型マウスだけでなく、イン酸イオン供与に関するENPP1-/-マウス、kl/klマウス(klotho-/-マウス)、また、現在、研究代表者のグループで作成しつつある組織非特異型アルカリホスファターゼ(TNAP) Tgマウスにおける骨細胞分化と基質石灰化を検索するとともに、ENPP1やpodoplanin、Phospho1などの検索を進めることで、平成28,29年度の目的である骨芽細胞から骨細胞への分化とリン酸イオン供与体の細胞学的関連について明らかにしてゆきたい。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 3件) 備考 (2件)
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