研究課題
菌血症から高頻度に分離されるA群レンサ球菌,肺炎レンサ球菌,および Streptococcus sanguinis は,他のレンサ球菌種と比較して,様々な付着因子や免疫回避因子を産生するため,血流における菌体生存を可能にすると考えられる.実際,肺炎レンサ球菌やA群レンサ球菌は血流での免疫回避と増殖により,致死率の高い侵襲性感染症を惹起する.一方,S. sanguinis は感染性心内膜炎の病巣から高頻度に分離される.しかし,これらの菌種の血流への侵入機構や全身への伝播機構について,詳細は不明である.本申請研究では,病原性レンサ球菌の血流侵入機構と血中での生存に関わる細菌因子を明らかにすることを目的とした.S. sanguinis について,血中での生存に関与する細菌因子を検索し,ピルビン酸オキシダーゼである SpxB に着目した.SpxB はS. sanguinis において過酸化水素産生を担う主な酵素である.ゲノム配列が報告されているSK36株を親株として,spxBの欠失株と復帰変異株を作製した.野生株ならびに復帰変異株と比較して,spxB欠失株のヒト末梢血中での生存率は低下した.S. sanguinis のヒト好中球に対する細胞毒性はspxB欠失により低下し,カタラーゼの添加により細胞毒性は抑制されたことから,S. sanguinis が産生する過酸化水素は好中球への細胞毒性と血中での生存に寄与することが示唆された.また,A群レンサ球菌と肺炎レンサ球菌についても血中での生存に関与する細菌因子を検索し,複数の候補因子を明らかにした.
2: おおむね順調に進展している
S. sanguinis について,血中での菌体生存に関わる因子の検索を遂行できたことから,おおむね計画通りに研究は進展していると考えられる.
病原性レンサ球菌の血中での生存に関わる細菌因子の探索を継続するとともに,これまでに明らかになった細菌因子について,欠失株を作製し,貪食細胞との相互作用や上皮バリア通過能を解析する.併せて,マウス感染モデルを用いた病原性の評価を行う.
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 1件) 図書 (8件) 備考 (1件)
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