研究課題/領域番号 |
15H05014
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
滝川 正春 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (20112063)
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研究分担者 |
青山 絵理子 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (10432650)
久保田 聡 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (90221936)
西田 崇 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (30322233)
服部 高子 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (00228488)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | CCNファミリー / CCN2/CTGF / CCN3/Nov / 受容体 / 軟骨 / 再生 / がん / 変形性関節症 |
研究実績の概要 |
① CCN2の細胞増殖にかかわる特異的受容体として、オルファンレセプターであるErbB2を同定した。すなわち、固相法による結合実験、スカチャード解析、Surface Plasmon Resonance (SPR)でCCN2がErbB2にKd値 約0.1-1nMで結合することを確認した。また、CCN2刺激でErbB2の自己リン酸化が起こること、ErbB(-)の乳がん細胞では、CCN2刺激後のCCN2の誘導が起こらなくなることから、ErbB2がシグナル伝達受容体であることも証明した。また、CCN2のVWCモジュールに活性中心があり、そのなかの25アミノ酸配列が、増殖阻害活性を有することも見出した。 ② 当初28年度以降の予定であったCCN2/CTGF以外のCCNファミリーメンバーの研究の一部を実施し、CCN3/Novが関節軟骨細胞の増殖はやや抑制するものの、分化を促進することを培養系で明らかにし、ラット実験的OAモデル動物に投与して、OAの予防・治療に効果があることを証明した。 ③ In vitroでアグリカン合成促進作用の強い IGFBPモジュールと、ヘパリン結合性を有し、in vitro, in vivoの両系で軟骨基質合成作用を有するTSP1モジュールを連結した組み換え体タンパクを大量調製することに成功した。 ④ CCN2の遺伝子発現をup-regulateすることにより、関節軟骨再生作用やアンチエイジング作用を発揮させる手段として、超低出力パルス超音波(LIPUS:Low Intensity Pulsed Ultra Sound)を培養軟骨細胞に負荷し、CCN2の誘導とアグリカンやII型コラーゲンの軟骨特異的基質の発現の亢進が見られること、またCCN2ノックアウトマウスから採取・培養した軟骨細胞では、LIPUSによる両軟骨特異的基質の発現の亢進が見られないことを見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H27年度の研究計画の内、①「CCN2の増殖シグナル特異的受容体の同定」はCCN2がhigh affinityでErbB2に結合すること、CCN2刺激でErbB2以降のシグナル伝達系が活性化され、ErbB2欠損細胞ではこの現象が見られないことなど、ErbB2がCCN2のシグナル伝達受容体であることが証明できたので、ほぼ目標を達成できた。②の「軟骨分化特異的受容体の同定」に先んじて、当初は28年度以降の予定であったCCN2/CTGF以外のCCNファミリーメンバーの代表的なものとしてCCN3/Novが関節軟骨細胞の増殖はやや抑制するものの、分化を促進することを培養系で明らかにし、実験的変形性関節症(OA)モデル動物に投与して、OAの予防・治療に効果があることを証明し、現在論文投稿中である。③ 「活性モジュールに徐放性を付与する方法の開発」に関しては、IGFBPモジュールにヘパリン結合性を有するCTモジュールを結合させた組み換え体タンパクの調製は沈殿するため不調に終わり、予定を変更してヘパリン結合性を有し、なおかつ、軟骨基質合成活性を有するTSP1モジュールとを結合させること、即ち、IGFBP―TSP1モジュール結合体の組み換え体タンパク質の調製に成功した。関節軟骨分化に機能をmaximize(最大化)させ、super cartilage regenerationを目的とした場合、むしろこちらの方が期待でき、H28年度に予定している活性測定の結果が楽しみである。④超低出力パルス超音波(LIPUS:Low Intensity Pulsed Ultra Sound)によるCCN2誘導を介したOA治療に向けての橋渡し研究では、ほぼ目標を達成して現在論文を書き上げ、投稿した。したがって、個別テーマの年度間の順序の入れ替えはあったものの、全体としては、概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
① 前年度に、当初は28年度以降の予定であったCCN2/CTGF以外のCCNファミリーメンバーであるCCN3/Novが関節軟骨細胞防御作用を有することを証明する研究を行ったことにより、当初の計画より後回しになった「軟骨分化特異的受容体の同定」を再開する。 ②「活性モジュールに徐放性を付与する方法の開発」に関しては、前年度に調製したIGFBP―TSP1モジュール結合体の組み換え体タンパクが、super cartilage regeneration活性を有しているか否か、in vitroおよびin vivoの系で調べる。 ③ CCN2の骨芽細胞分化、破骨細胞分化、血管新生(血管内皮細胞の増殖、遊走)、線維化(線維芽細胞のコラーゲン合成の亢進)に関わるモジュールの同定とそれらのシグナル特異的受容体の同定を行う。また、血管新生に関しては、鶏卵漿尿膜を用いたin ovo実験を行う。 ④ CCN2は軟骨細胞、骨芽細胞、血管内皮細胞の増殖を促進するので、H27年度に行ったがん細胞だけでなく、「正常細胞の増殖制御におけるCCN2-ErbB2の相互作用の役割」の検討も行う。 ⑤ 研究計画調書記載の9)のプロジェクトとなるが、CCN3が関節軟骨細胞に関してはCCN2と同様の作用を有することが明らかとなったため、CCN2とCCN3を併用することにより関節軟骨分化促進に機能をmaximize(最大化)させることが有望となった。そこで、CCN3とCCN2-TSP1モジュールを同時投与したり、CCN3の活性モジュールを同定してそのモジュールとCCN2のTSP1モジュール結合タンパクを調製し、その関節軟骨分化促進作用を調べるなど、当初平成28年度以降の研究計画であったプロジェクトを前倒しで遂行する。
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