研究課題
1)低出力パルス超音波(LIPUS)が、CaチャネルであるTRPV4を介して、培養軟骨細胞へのCaイオンのinfluxを誘導し、その結果p38MAPKおよびERK1/2のリン酸化が亢進し、CCN2の産生が亢進するという、LIPUS刺激~CCN2産生に至るシグナル伝達経路を明らかにし、LIPUSの作用メカニズムの分子機構を明らかにした。また、ラット関節軟骨を用いたin vivo実験でLIPUSがCCN2の発現を促進することも確認した。さらに、半月板からinnerとouterと二つに分けて細胞を培養し、LIPUSの作用を調べたところ、両細胞、特に軟骨細胞に近い性状を示すinner細胞で、CCN2が強く誘導されることを見出した。2)CCN3/Novがラット実験的OAモデルの予防・治療に有用であることを証明して投稿中であったが、reviceのための追加実験を行い、国際誌にacceptされた。3)血管内皮細胞の増殖、遊走、管腔形成に対する個別モジュールの作用を調べたところ、増殖促進効果は4つのいずれのモジュールでも認められたが、特にIGFBPおよびTSP1モジュールでその作用が強いこと、4つの個別モジュールのmixtureで全長CCN2の作用を再現できることが判明した。また、遊走能はTSP1とCTモジュールが特に活性が強く全長CCN2を上回ることが判明した。さらにin vitroでの管腔形成能はIGFBPついでTSP1およびCTモジュールの活性が強いことが明らかとなった。また、鶏卵漿尿膜(CAM)アッセイで血管新生活性を測定するとIGFBPとTSP1に強い血管新生活性が認められた。個別モジュールの線維化促進作用については、in vitroでは全てのモジュールに活性が有り、特にTSP1に強い活性があった。4)CCN4(WISP1)遺伝子を骨髄間葉系幹細胞に導入して強発現させると軟骨細胞分化や軟骨修復が促進されることを明らかにした。5)CCN2はOPGに結合することにより破骨細胞形成を促進するが、その結合はVWCモジュールを介することを見出した。
2: おおむね順調に進展している
LIPUSの作用メカニズムの分子機構を明らかにし、LIPUSが変形性関節症(OA)治療に有用であることの根拠データをin vitro実験で追加することにより、論文がOA分野のtop journalである国際誌Ostearthritis & Cartilageにacceptされ出版された。また、最終年度に予定していた、CCN2以外のCCNファミリータンパク質の作用については、CCN3/NovおよびCCN4/WISP1の研究を前倒しで行い、国際雑誌に投稿し、受理され論文化した。これに対し、軟骨分化特異的受容体の同定と増殖特異的受容体の同定は未だ現在進行中である。一方、IGFBP-TSPモジュール結合体のin vivoアッセイは、溶媒の異害作用を回避する必要が判明し、結論は次年度に持ち越しとなったが、これに関しては昨年度の実績報告書の今後の方針に記載したが、そもそも計画調書では平成28年以降に行うことになっており特に遅れているわけではない。さらに、軟骨細胞以外の各種細胞に対するCCN2個別モジュールの影響も破骨細胞分化、骨芽細胞分化については次年度に持ち越しとなったが、血管内皮細胞については詳細に調べ、幾つもの興味ある知見を得ている。したがって、個別テーマの年度間の順序の入れ替えはあったものの、全体としてはおおむね順調に進展している。
1)LIPUS実験はCCN2の臨床応用の可能性を証明する一番の早道であるので、ラット実験的変形性関節症(OA)モデルを用いて、LIPUS誘導性CCN2にOA予防・修復・治療効果があるかどうか調べる。また、半月板細胞においてもLIPUSがCCN2を誘導することを28年度に明らかにしたことから、半月板損傷動物モデルを作成して、LIPUS誘導性CCN2に半月板損傷に対して修復・治療効果があるかどうか調べる。2)LIPUS実験や他のCCNファミリーメンバーの研究を論文化するために、当初の計画より後回しになっているErbB2がCCN2の正常・腫瘍共通の増殖シグナル受容体であるか否かの確認と、またCCN2の軟骨分化特異的受容体の同定の研究を加速させる。3)昨年度から検討を開始した血管新生活性、破骨細胞形成促進活性、線維化促進活性、骨芽細胞増殖・分化促進作用を担う個別モジュールの同定とそれらのシグナル特異的受容体の同定を行う。4)臨床応用を目指した橋渡し研究を加速させるため、IGFBP―TSP1モジュール結合体の組み換え体やCCN3を同時投与して、super cartilage regenerationを目指す研究を再開する。また、IGFBP―TSP1モジュール結合体にsuper angiogenesis活性があるか否かを明らかにする。5)CCN2-ErbB2の相互作用を阻害する25アミノ酸からなるペプチドが、培養細胞だけでなく、in vivoで腫瘍増殖を抑制するか否か、また、がんの骨転移動物モデルを保有している研究協力者と共に、がんの転移を抑制するか否かを調べ、新規抗がん剤開発の可能性を探る。
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