現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度はミクログリアの産生するカテプシン群の疼痛炎症における役割についての解析を行った。これまでの解析の結果、野性型と比較してカテプシンB欠損マウスは中枢性(脊髄)に炎症性疼痛に対して有意な抵抗性を示したが、神経障害性疼痛に対しては有意な差を示さなかった(Sun et al., J Neurosci 32, 11330-11342, 2012)。一方、カテプシンS欠損マウスは中枢性(脊髄)に神経障害性疼痛ならびに炎症性疼痛に対して特に慢性期において有意な抵抗性示した(Zhang et al., J Neurosci 34, 3013-3022, 2014)。
本年度はまずカテプシンH欠損マウスならびにカテプシンE欠損マウスを用い、カテプシンHならびにカテプシンEの解析を行った。その結果、カテプシンH欠損マウスは末梢性に疼痛過敏を示すことが明らかとなった。また、カテプシンEは末梢性に神経障害性疼痛に対して有意な抵抗性示すことが分かった。これらの結果よりカテプシンBが炎症疼痛において脊髄ミクログリアの保護性(M2)から傷害性(M1)への「分子スイッチ」として働く可能性が強く示唆された。
そこで次にCre-Loxpシステムを用いミクログリア特異的なカテプシンB欠損マウスを作成することとした。しかし、先行実験として行ったカテプシンDのfloxマウスとNestin-Creマウスをかけ合わせニューロン特異的にカテプシンDを欠損させたマウスにおいて、ニューロンに依然としてカテプシンDが検出された。これは周囲の細胞から産生分泌されたプロカテプシンDが細胞表面のマンノース6リン酸受容体を介してニューロン内に取り込まれ、リソソームに運ばれて成熟型のカテプシンDに変換したと考えられる。この結果は現時点では細胞特異的にカテプシンを欠損させることは技術的に困難であることを示唆している。
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