口腔領域で頻発する固形がんは、十分な血管新生がともなわないため低酸素・低グルコースストレス状態にあり、がん細胞は代謝要求性がきわめて高い状態にある。このようなストレス下では、オートファジーが細胞増殖に貢献していると考えられる。さらに、低栄養は不良タンパク質蓄積をまねき、小胞体ストレス誘導性の生存・増殖シグナルが発信される。このようなストレス耐性状態にある口腔がんを克服する一つの方策として、オートファジーや小胞体から発信される生存シグナルを抑制し、強い小胞体ストレスによる細胞死シグナルを惹起することが有効であると考えられた。事実、ボルテゾミブなどの抗がん剤は小胞体ストレス誘導性アポトーシスを惹起する。本研究では、がん細胞における代謝ストレスシグナルを解明し、その分子標的に基づき、増殖シグナルを細胞死シグナルへと変換させることで新規口腔がん治療法開発に繋げることを目指し、以下の研究を実施した。IRE1αは細胞質側にキナーゼ領域とRNase領域を持ち、Atg12/Atg5はキナーゼ領域にAtg12を介して直接結合する。これらの知見を元に、以下の研究項目を実行した。 Atgファミリー分子による小胞体センサー活性制御メカニズムの解明(キナーゼ活性とRNase活性) Atgファミリー分子と-小胞体センサー結合領域のマッピングとそれに基づく単鎖型抗体の開発 抗体のアデノウィルスベクター化による扁平上皮がんへの応用 Atg12/Atg5-小胞体センサー結合阻害剤の探索 以上の結果を取りまとめ、Atg12/Atg5-小胞体センサー結合阻害によるオルガネラストレスシグナルのクロストークを解明した。
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