研究課題
カロリー制限は、疾患のリスクを低減することで寿命を延長しすることが報告されている。一方、唾液分泌能の低下に伴う口腔乾燥症はシェーグレン症候群や加齢に伴い認められるが、これらの原因は不明で、有効な治療法は未だにないのが現状である。このことから今回我々は、カロリー制限が唾液分泌能に与える影響について検討した。12ヶ月齢のC57BL/6雄マウスを用いて、食餌自由摂取群と35%カロリー制限摂取群に分けて6ヶ月間飼育した。食餌制限3ヶ月、6ヶ月後にそれぞれの群における唾液分泌量を測定した。6ヶ月後の実験終了時にマウスから唾液腺を摘出し、組織学的検討により炎症性細胞浸潤の程度を検証し、real-time PCR法およびDNAマイクロアレイ法により遺伝子発現の検討ならびにケトン体の推移について検討を行った。実験終了後に唾液腺の解析を行ったところ、自由摂取群の高齢マウスでは唾液腺局所へのリンパ球浸潤が認められたが、食餌制限群では認められなかった。遺伝子発現の検討では食餌制限群ではSirt1や抗酸化酵素の発現増強が認められる一方、炎症性サイトカインの遺伝子発現の減少も認めた。さらにDNAマイクロアレイ解析では、CR群においてアミノ酸代謝、炎症関連因子に変動が認められた。さらにCR群ではケトン体が経時的に上昇した。カロリー制限による加齢に伴う唾液分泌能低下の改善効果はSirt1の発現による抗酸化作用、NFkBの転写抑制による炎症性サイトカインの発現抑制によるものの他、ケトン体の上昇も確認された。βヒドロキシ酪酸はケトン体の一種で饑餓状態で糖がエネルギーとして利用できない場合の代替エネルギー源であるであり、βヒドロキシ酪酸の投与はパーキンソン病等で細胞内のミトコンドリアのATP産生能を活性化することにより神経を変性から保護することから、これらの機序により唾液分泌が改善されたと考えられた。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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