研究課題/領域番号 |
15H05023
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
和田 尚久 九州大学, 大学病院, 教授 (60380466)
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研究分担者 |
前田 英史 九州大学, 歯学研究院, 教授 (10284514)
清島 保 九州大学, 歯学研究院, 教授 (20264054)
友清 淳 九州大学, 大学病院, 講師 (20507777)
和田 裕子 九州大学, 歯学研究院, 助教 (70380706)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 再生医学 / 歯の発生 / 幹細胞 |
研究実績の概要 |
本研究の目的である組織誘導を基盤とした新規歯内疾患治療法の開発を達成するために、Semaphorin3Aの歯・歯周組織形成における機能解析を行った。 マウス歯原性上皮細胞および歯胚発生過程においてWnt/beta-catenin経路の活性化を行ったところ、細胞増殖活性が低下した一方で、咬頭の原基となる歯の形成を誘導した。マイクロアレイ法を用いて、歯原性上皮細胞におけるWnt活性化により発現が抑制される因子としてSemaphorin3Aを同定し、機能解析をしたところ、Wnt/beta-catenin経路は歯胚発生に重要な過程である歯原性上皮細胞の増殖をSemaphorin3Aの発現低下を誘導することにより調節していることが示唆された。家族性大腸腺腫症におけるAPC遺伝子変異や遺伝子改変マウスにおける歯原性上皮特異的なWnt/beta-cateninシグナルの活性化により、歯牙腫が発生することが報告されている。これまで、歯牙腫におけるWnt/beta-cateninシグナルの活性化および歯原性上皮におけるその機能については不明であったため、ヒト歯牙腫症例におけるbeta-catenin発現を検討したところ、免疫組織学的に歯原性上皮細胞の核および細胞質に高頻度に発現していた。これらの結果から、歯原性上皮においてWnt/beta-cateninシグナル依存的なSema3Aの発現を介した増殖の制御が歯胚発生および形成に重要であるだけでなく、歯胚発生過程に障害を生じたことにより形成される歯牙腫の発生にも関与している可能性が示唆された。 加えて、歯根膜組織におけるWnt5a, Transgelin, beta-igh3, R-spondin2, ActivinAおよびTenomodulinと歯髄組織におけるCaSRの発現ならびに組織再生に関連する機能について各々明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Semaphorin3Aの歯・歯周組織形成における機能解析が進めていく予定であったが、歯胚発生過程におけるSemaphorin3Aの関与が明らかとなった。その為、当初の研究計画から内容が変化してきているが、Wnt/beta-catenin経路の下流にSemaphorin3Aの発現抑制が認められ、歯原性上皮細胞の抑制に関わっていることが明らかになり、加えて前年度の課題であった本メカニズムが関連した歯原性疾患の検討を進めていったところ、歯胚発生の異常により生じる歯牙腫の発生にsemaphorin3Aが関与することを明らかにできたため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に達成できなかった新規歯胚器官培養システムの構築とWnt/beta-catenin経路活性化によるSemaphorin3A発現低下に関わる因子の同定を達成し、シグナリングメカニズムの解析を進める。加えて他因子との関連についても検討していく。 以上により、Semaphorin3Aおよび他因子の機能を検討し、効率よく歯周組織を再生あるいは形成誘導する包括的な方法を確立することに繋げていく。
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