研究実績の概要 |
本研究では、これまでに我々の研究グループが開発してきた象牙質再石灰化技術および象牙質再生技術のハイブリッド技術を基盤として、多機能性接着性修復材料を開発し、その修復技術を開発・普及させることによって新しい齲蝕治療法開発の一助となる知見を得ることを目的とした。齲蝕により脱灰された象牙質の再石灰化を強力に誘導する機能性モノマー、石灰化誘導性タンパク質と、象牙質再生に関与し象牙芽細胞分化を強力に促進する象牙質リンタンパク質等による試作修復材料の象牙質再石灰化・再生誘導能、接着性能等の特性を種々実験で明らかにした。 本年度は、象牙質リンタンパク質と協働作用を発揮するco-factorの検討を行った。細胞接着因子であり、カルシウム結合能を有するネフロネクチン、ラミニンを用いて、象牙芽細胞様細胞あるいは歯髄幹細胞に対する細胞遊走、増殖、分化、石灰化誘導能について検討した。その結果、ネフロネクチン由来可溶性RGDペプチドの不動化によって、象牙芽細胞様細胞の増殖およびアルカリホスファターゼ活性を刺激し、象牙質関連遺伝子(BSP, OCN, ALP, OPN, Runx-2, DMP-1)の発現を増強し、石灰化を誘導した。またヒト歯髄幹細胞のBSP, ITGA1, 4, 7の遺伝子発現を増強し、石灰化を誘導した。さらに、ラミニン111、ラミニン411、ラミニン511(インテグリン結合性断片)は象牙芽細胞様細胞の増殖、分化を刺激することが明らかとなり、ラミニン411、ラミニン511の作用に関しては特許出願した。これらのことからnephronectin, laminin断片は象牙質再生誘導因子として象牙質リンタンパク質と協働作用を発揮し得るco-factorとなることが明らかになり、これらのコンビネーションによる齲蝕治療材料開発の可能性が示唆された。
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