研究課題
Ⅰ.目的 サルコペニアとなっている者では,顎顔面領域の筋肉量,筋力も同様に低下し,咀嚼機能が低下することが考えられる.そこで地域高齢者を対象として,筋肉量・筋力と口腔機能との関連を検討し,特に握力と咀嚼能率との関連に注目して分析した.Ⅱ.方法 対象者は,82-84歳の地域高齢者809名 (男性407名,女性402名)とした.体組成計を使用し筋肉量を,また全身の筋力指標として握力を測定した.次に,口腔内検査を行い,残存歯数を記録した.さらに,口腔機能として,最大咬合力(デンタルプレスケール,ジーシー社),咀嚼能率スコア(検査用グミゼリー,UHA味覚糖社),刺激時唾液分泌速度(SSFR),舌圧(JMS舌圧測定器,ジーシー社),開口量を測定した.統計学的分析には,筋肉量・握力と各口腔機能との関連について検討するために,Spearmanの順位相関係数の検定,ロジスティック回帰分析などを用いた.Ⅲ.結果と考察 残存歯数,最大咬合力,咀嚼能率スコア,舌圧,開口量の平均は,それぞれ14.7本,198N,3.9,27.0kPa,48.8mmであった.筋肉量ならびに握力は,すべての口腔機能 (最大咬合力,咀嚼能率スコア,SSFR,舌圧,開口量)と有意な正の相関関係を認めた.重回帰分析を用いて性別と年齢を調整したところ,握力は最大咬合力,咀嚼能率舌圧,開口量と有意な関連を認め,筋肉量は舌圧とのみ有意な関連を認めた.さらに従属変数を咀嚼能率(下位25% / それ以外)としたロジスティック回帰分析の結果,性別と残存歯数を調整した上でも,最大咬合力,舌圧も加えて,握力は,咀嚼能率と有意な関連が認められた. 本結果より,筋肉量 (Sarcopenia)よりむしろ筋力の低下 (Dynapenia)が,口腔機能維持に重要であることが示唆された.
2: おおむね順調に進展している
縦断研究の参加者も予想通りで,データ整理,分析も順調である.
次年度は86歳が調査対象であるが,かなり高齢であるので,参加者の減少が心配である.適宜訪問調査も取り入れたい.
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件)
Geriatr Gerontol Int
巻: 16 ページ: 1281-1288
JDR Clinical & Translational Research
巻: 1 ページ: 69-76