研究課題
健康な歯周組織の維持に重要な役割を担う角化歯肉は歯周炎や歯の喪失により減少する。実際に角化歯肉を失った患者には、その再獲得を目的に自家組織移植が施行されるが、その侵襲の大きさ及び術式の困難さが問題視されている。本年度は、より低侵襲かつ簡便な角化歯肉獲得法の開発を目的に、口腔粘膜上皮の角化を制御するメカニズムを中心に検討し、学会発表を行った。今年度の補助金は主に下記の研究を行うための実験費用に充てた。1、角化歯肉獲得関連タンパク質の同定に関して、組織形成に重要な基底膜に着目し、非角化粘膜上皮である頬粘膜と角化粘膜上皮である口蓋粘膜の解析を行った。実際には、基底膜を構成する主要なタンパク質について免疫組織化学染色法にて網羅的に解析した。その結果、頬粘膜と口蓋粘膜の基底膜を構成するいくつかのタンパク質が異なることを明らかにした。2、同定されたタンパク質の中で、最も発現に差を認めた分子について、角化との関連を明らかにするため、より詳細なin vivo、in vitro実験を行った。具体的には、胎齢の異なるマウスの胎仔を用いて、角化歯肉の発生過程における同定分子と角化の時系列を解析、また同定分子のノックアウトマウスを用いた口蓋粘膜の角化レベルの解析、さらにヒト口腔粘膜上皮細胞を用いた同定分子のノックダウンによる角化への影響を解析した。その結果、基底膜構成分子の一つであるIV型コラーゲンα5/α5/α6分子は口腔粘膜上皮の角化を制御する一分子であることが証明された。今年度の研究において、基底膜は口腔粘膜の角化を制御する重要な因子である可能性が示唆された。つまり、角化歯肉を誘導する基底膜を人工的に作製することで、自家組織移植を回避できる可能性、さらには角化に重要な基底膜分子の発現を亢進させる薬剤を非外科的に応用することで、より低侵襲な角化歯肉獲得法につながる可能性を見出すことができた。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
Sci Rep.
巻: 8 ページ: 2612
10.1038/s41598-018-21000-0.