研究実績の概要 |
口腔インプラント治療におけるオッセオインテグレーションの獲得は, 治療の成功のための重要な要因のひとつであり、インプラント体と骨組織との結合の獲得効率を向上させるために, 様々なインプラント表面改質処理法の開発がなされている. この一方でインプラント治療の増加に伴い, インプラント周囲炎の症例が増加している. インプラント周囲炎とは, 細菌の感染によりインプラント周囲に炎症が生じ, 周囲の支持骨が喪失する病態を示す. インプラント周囲炎に罹患した局所からは, P gingivalis, F nucleatumなどが分離され, 歯周炎の歯周ポケット内の細菌叢と近似していることが知られている. 歯周病原性細菌, およびその外膜構成成分の1つであるリポ多糖 (以下LPS) は, 骨芽細胞の分化を抑制している可能性が報告されている. また, チタンは耐食性に優れているが, 近年チタンの腐食により口腔内に溶出されたチタンイオンがLPSと共存すると, 破骨細胞を活性化するRANKL発現がより増強され, 骨吸収を促進すると報告された. したがって, チタンインプラント表面では, LPS刺激に対する炎症反応にどのような影響を与えるかについて検討することが重要である一方で, 骨のリモデリングや炎症反応を考慮したチタン材料は未だ開発されていない. 我々の研究室では, インプラント表面改質処理法としてDLC コーティングチタンに着目し, 研究してきた.本研究室では、さらに高硬度で平滑性, 摩擦摩耗性の向上を目指し改良された水素化テトラへドラルアモルファスカーボン (以下ta-C:H)を用い検討を行った結果、骨芽細胞の分化を促進し, 破骨細胞の分化を抑制することが明らかにし、骨芽細胞の初期接着の促進およびP.g LPS誘導性炎症性サイトカインおよびケモカインの発現の抑制を行うことが明らかとなった.
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