研究課題
我々が同定したエピプロフィン/Sp6(Epiprofin, Epfn)は上皮系器官に発現するSp/Kruppel-like factor (KLF)ファミリーに属するZnフィンガー転写因子である。Epfnは発生初期の歯原上皮全体に発現し、その後、内エナメル上皮に限局して発現する。また、上皮においてEpfnは、幹細胞と増殖能の高い前駆細胞で構成されている基底細胞層および分化が進み細胞分裂が停止した細胞で構成される上基底細胞層のケラチノサイトに発現している。毛根においては細胞増殖の活発な毛根最下部のマトリックスおよびキューティクルを行う細胞層に発現している。本研究では、エピプロフィン(Epiprofin, Epfn)よる細胞周期制御と転写制御を介した上皮系器官構成細胞の運命決定機構の解明を目指す。具体的には、Epfn遺伝子欠損マウス(Epfn KO)、上皮特異的Epfnトランスジェニックマウス(K5-Epfn)の発生歯胚と上皮・毛根、および初代培養細胞ならびに歯原性上皮細胞とケラチノサイト細胞株を用い、(1)Epfnの細胞周期制御の分子機構の解明、(2)細胞増殖・分化時におけるEpfnの蛋白間相互作用ドメインの決定と共役因子の同定(3)Epfn発現調節を応用した上皮器官組織幹細胞の効率的誘導法の確立を目指す。上皮特異的なケラチン5プロモーターを用いて作成したEpiprofinトランスジェニックマウスでは、本来エナメル芽細胞に分化しない歯原性上皮細胞の異所性分化誘導がみられ、異所性のエナメル質形成が観察された。この発見により、エピプロフィン遺伝子を用いることでエナメルの人工的再生に応用できる可能性を見出した。
2: おおむね順調に進展している
本年度は上皮特異的なケラチン5プロモーターを用いて作成したEpiprofinトランスジェニックマウスでは、本来エナメル芽細胞に分化しない歯原性上皮細胞の異所性分化誘導がみられ、異所性のエナメル質形成が観察された研究を国際的な科学雑誌に発表し、いくつかの新聞等で研究内容が紹介された。この発見により、エピプロフィン遺伝子を用いることでエナメルの人工的再生に応用できる可能性を見出した。
今後も当初の研究計画通りに研究を進める。具体的には、1)エピプロフィン分子のリン酸化とその制御機構の解析、2)エピプロフィン分子を用いた再生医療への応用へ向けた基盤研究、を行う。本年度までにエピプロフィンのリン酸化部位がN-末端領域に存在していることが明らかとなっている。しかしながら、どのアミノ酸がリン酸化しているのかは不明である。エピプロフィン分子を強制発現させ、そのリコンビナントタンパクのアミノ酸配列を調べ、リン酸化部位の同定を行う。また、K5-エピプロフィントランスジェニックマウスにより、エピプロフィンを歯原性上皮細胞に強制発現させると異所性のエナメル芽細胞に分化させる事ができることを報告した。この強制発現系を用いた人工的エナメル芽細胞誘導法の開発を試みる。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
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