研究課題
平成27年度は、ビーグル犬に上顎両側犬歯および前臼歯に人工的開窓モデルを作成し、0.3%FGF-2含有ハイドロキシプロピルセルロース(HPC)製剤を試験群に、反対側(対照群)にはHPCのみを投与し、両群の臨床的観察を行った。その結果、両群ともに歯肉の裂開や退縮は認められず、FGF-2製剤投与群においても歯肉増殖などの異常所見は観察されなかった。現在、製剤投与6週後にと殺し採取した組織片のマイクロCT解析による歯槽骨の再生状態の解析と、両群の歯槽骨、歯根膜、セメント質などの再生量を比較するため組織切片を作製中である。脂肪組織由来幹細胞(ADSC)をβーグリセロリン酸とアスコルビン酸を含有する石灰化誘導培地で長期培養することにより分化誘導し、ADSCからRNAを抽出し、逆転写反応後、Real-time PCR法により石灰化関連遺伝子および歯根膜特異的遺伝子発現を経時的に解析した。その結果、分化誘導したADSCにおいて、Runx2、骨シアロタンパク(BSP)やなどの石灰化関連遺伝子や歯根膜特異的遺伝子PLAP-1の発現上昇が検出され、ADSCの骨芽細胞や歯根膜細胞への分化能が確認できた。ヒトADSCを3日間培養し遠心分離した上清(ADSC -CM)の歯根膜細胞に及ぼす影響を解析した。その結果、ADSC-CMは歯根膜細胞の増殖には顕著な影響を与えなかったが、歯根膜細胞のアルカリフォスファターゼ(ALP)、Runx2、BSP およびコラゲナーゼのmRNA発現を上昇させた。また、ADSC-CM添加により歯根膜細胞の石灰化ノジュール形成能の有意な亢進が観察され、ADSC由来の液性因子が歯根膜細胞の硬組織形成細胞への分化を促進する可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
平成27年度は、ビーグル犬の開窓モデルを用いたFGF-2の歯周組織再生効果の検討を実施した。また、脂肪組織由来幹細胞(ADSC)の骨芽細胞や歯根膜細胞への分化能が確認できた。さらに、ADSC由来の液性因子が歯根膜細胞の硬組織形成細胞への分化を促進する可能性を明らかにしたことから、平成27年度に予定していた計画を概ね計画通りに遂行できたと考えている。
平成28年度以降は、平成27年度に行ったビーグル犬の開窓モデルに対するFGF-2の歯周組織再生効果をX線的および組織学的に検討する。そして、脂肪組織由来幹細胞(ADSC)の培養上清中の液性因子の歯根膜細胞に及ぼす影響についてのプロテオーム解析を計画している。また、ADSC含有移植剤に適した足場材について検討するため、β-TCPなどの骨補填材などの性状とADSCの生存率や含有可能細胞数との関連性についての検討を計画している。
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