顆粒の連結による多孔体化について、本年度はα型リン酸三カルシウム(α-TCP)顆粒を高温焼成で連結させた顆粒連結型α-TCP多孔体を前駆体とし、溶解-析出型反応を利用した組成変換により炭酸アパタイト連通多孔体を作製する方法を検討した。顆粒連結型α-TCP多孔体を1モル%の炭酸水素ナトリウム溶液のみに浸漬した場合には炭酸カルシウム(カルサイト)が副生成物として生じたが、リン酸水素二ナトリウムを1/10モル濃度添加した混合溶液とすることで炭酸アパタイト単一相が得られることを見出した。得られた炭酸アパタイト連通多孔体の気孔率は約58%であり、そのうちマクロ連通気孔の占める割合は約22%であった。間接引張強さは1.8MPaであり、市販の連通多孔体型骨補填材と遜色ない値が得られた。日本白色家兔の脛骨欠損モデルを用い、炭酸アパタイト連通多孔体にて骨再建を試みたところ、連通気孔内部に細胞や組織の侵入が確認され、4週埋入後には15%、12週埋入後には47%の新生骨形成が認められた。コントロールとして用いた炭酸アパタイト緻密体(4週埋入後には4%、12週埋入後には16%)に比べ極めて早く骨置換されたことから、顆粒連結法によるマクロ連通気孔の導入は骨置換速度の亢進に有効であると結論づけた。 繊維状気孔形成材による多孔体化については、無水石膏多孔体の炭酸化条件を再検討し、カルサイトより溶解度の高いアラゴナイトを一部生成させることに成功した。この前駆体を用いれば水熱処理を必要とせず、低温で炭酸アパタイトに組成変換できることから、低結晶性の炭酸アパタイトが得られ、優れた骨置換性を示すことが期待される。 本法で合成した炭酸アパタイトのタンパク質吸着特性について基礎的に調べたところ、現在までにフィブロネクチン吸着に特異性があることが判明しており、優れた骨伝導性に起因している可能性が示唆された。
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