研究課題/領域番号 |
15H05043
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
岡本 哲治 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 教授 (00169153)
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研究分担者 |
林堂 安貴 広島大学, 病院(歯), 講師 (70243251)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | rBC2LCN / CD133陽性細胞 / 無血清培養 / sphere形成能 / IGF-2 / exosome / がん幹細胞 / 口腔扁平上皮がん細胞 |
研究実績の概要 |
がん幹細胞マーカーであるCD133陽性細胞は足場を持たない浮遊培養条件でも増殖し、浮遊培養塊 (Sphere) を形成するが、CD133陰性細胞は形成しない。口腔がんにはCD133陽性細胞が約0.5%存在することを明らかにした。 さらに、ES細胞やiPS細胞などの未分化幹細胞が発現していると考えられていた、rBC2LCNが認識する糖鎖構造を、口腔扁平上皮がん細胞や扁平上皮癌細胞においても発現されていることを明らかにした。さらに、rBC2LCN認識糖鎖発現口腔扁平上皮がん細胞(扁平上皮がん細胞)(rBC2LCN(+)OSCC)は無血清浮遊培養系で高いsphere 形成能を有することを明らかにし、rBC2LCN認識糖鎖発現口腔扁平上皮がん細胞は幹細胞としての性質を持っていることが考えられた。さらに、rBC2LCN認識糖鎖発現口腔扁平上皮がん細胞と非発現細胞間で、DNAマイクロアレイ解析にて発現遺伝子群の検討をした結果、rBC2LCN(+)OSCCはinsulin like growth factor-2 (IGF-2)を陰性細胞と比較して10倍以上発現していることを明らかにし、またタンパクレベルでもそれが証明された。さらに、rBC2LCN(+)OSCCにおいてはIGF-2の下流シグナルが亢進していることもリン酸化の検討で明らかとなった。rBC2LCN(+)OSCC細胞及びrBC2LCN(-)OSCCの培養上清からexosomeを精製しその機能を解析した結果、rBC2LCN(+)OSCC由来exosomeはrBC2LCN(-)OSCCのshpere形成能を促進した。 以上の結果から、口腔扁平上皮がんのmicroenvironmentにおいて、rBC2LCN(+)OSCCはがん幹細胞としての形質を保持していることが考えられ、同細胞を標的とした治療の有用性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度明らかにした、rBC2LCN(+)OSCC細胞由来exosomeはrBC2LCN(-)OSCCのsphere形成能を促進し、さらにrBC2LCN(+)OSCCにおいてはIGF-2の発現が亢進し、そのシグナル系も亢進していることが明らかとなった。 この結果から、rBC2LCN(+)OSCCは口腔扁平上皮がんのがん幹細胞としての形質を保持していることが考えられ、同細胞を標的とした治療の有用性が考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
幹細胞の増殖と分化を制御するニッチ機構の 解明とそのサイトカインネットワークを標的とした診断、分化誘 導治療や遺伝子治療の開発研究。 1. OSCC臨床組織からの無血清培養系で癌細胞初代培養と癌幹細胞の分離。 2. siRNA、miRNA導入などによる発現抑制、さらにTalen,Crisprなどゲノム編集法を用いた遺伝子のノッ クダウンおよび発現低下(抑制)遺伝子の癌幹細胞への遺伝子導入による In vitro での細胞特性の解 析と分化誘導法の開発研究。 3. ヌードマウス移植OSCC腫瘍を用いた分化誘導治療・遺伝子治療の開発研究。 4. ルーティーンに行っている種々の分子に加えて、本研究で明らかにした癌幹細胞で特異的あるいは過剰 発現している分子群の口腔癌組織での発現を検討し、臨床動態、治療効果との関係について検討する。
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