研究課題/領域番号 |
15H05045
|
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
杉浦 剛 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 教授 (40322292)
|
研究分担者 |
浜田 倫史 鹿児島大学, 医歯学域医学部・歯学部附属病院, 助教 (00444894)
熊丸 渉 九州大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (90432947)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 機能性RNA / 口腔癌 / 腫瘍マーカー / 口腔癌幹細胞 |
研究実績の概要 |
本研究は、1.血中・唾液・尿中miRNA測定による新規口腔癌マーカー(転移マーカー)の発見、2.マーカーmiRNAの機能解析と応用による転移臓器制御法の確立(環境リセット法)、3.Brachyuryを制御するmiRNAによる口腔癌幹細胞制御療法の開発(幹細胞押し出し法)を目的としている。 1.血中・唾液・尿中miRNA測定による新規口腔癌マーカー(転移マーカー)の発見:まず、口腔癌患者および健常者から血液サンプルを採取し、マイクロRNAアレイを行った。口腔癌患者血清と健常者血清との間に明らかに5倍以上の発現差があるmicroRNAを2つ(miR-X, miR-Y)発見した。これらのmicroRNAの発現量を指標に、口腔癌の診断能をROC解析で評価すると、miR-XではAUC 0.720、感度92.9%、特異度50%、miR-YではAUC 0.763、感度66.67%、特異度80%であった。これらの2つのmicroRNAを併用すると感度97.6%、特異度90%であり、極めて高い診断能をもつことが明らかになった。 2.マーカーmiRNAの機能解析と応用による転移臓器制御法の確立(環境リセット法):miR-Yの標的遺伝子についてその配列からコンピュータデータベースを用いて予測した結果、インテグリンベータ1が最も有力な候補として挙げられた。合成核酸によりmiR-Yを模倣し、癌細胞に導入すると、インテグリンベータ1発現が抑制されたことからインテグリンベータ1が標的遺伝子であると考えられた。 3.Brachyuryを制御するmiRNAによる口腔癌幹細胞制御療法の開発(幹細胞押し出し法):Brachyuryを標的とすることが予想されるmir-335-5pを合成核酸として作成し、癌細胞に誘導した。現時点では十分なBrachyury発現抑制が得られていない。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
口腔癌に対する腫瘍マーカー候補microRNAが発見されたこと、その機能的役割について標的遺伝子まで絞り込みができたことは予定を上回る進行であるといえる。 一方で、Brachyuryを標的とすることが予想されるmir-335-5pを合成核酸として作成し、癌細胞に誘導したが、現時点では十分なBrachyury発現抑制が得られておらず、別の候補microRNAについて、もしくはsiRNAの直接阻害もかんがえなければならない。以上より全体的には順調と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
1.血中・唾液・尿中miRNA測定による新規口腔癌マーカー(転移マーカー)の発見:さらに精度を上げるために、miR-Zを応用するように考えている。3つのmiRNAを用いることでさらに精度が上がることが期待できる。特許申請も念頭に進める予定である。 2.マーカーmiRNAの機能解析と応用による転移臓器制御法の確立(環境リセット法:miR-X,-Y.-Z)について標的遺伝子を引き続き検索、検証し、動物転移モデルに応用を開始する。 3.Brachyuryを制御するmiRNAによる口腔癌幹細胞制御療法の開発(幹細胞押し出し法):Brachyuryを標的とすることが予想されるmir-335-5pを合成核酸として作成し、癌細胞に誘導したが、現時点では十分なBrachyury発現抑制が得られておらず、別の候補microRNAについて、もしくはsiRNAの直接阻害もかんがえなければならない。
|