研究課題
歯科矯正治療においては、数年にわたって歯に装置を装着することから、齲蝕や歯周病、歯根吸収などさまざまな問題点も偶発する。そこで、矯正的な歯の移動速度の亢進により、治療期間の短縮をはかることができれば、これらの問題点の多くが解決される 。従来、矯正力として静荷重が利用されてきたが、本研究では、動荷重である振動刺激に着目し、これらの併用による歯の移動促進効果を安全に効率的に行うために、振動特性の最適化と有効な使用方法を検討するとともに、作用メカニズムを細胞・分子レベルまで解析して、生体に安全で有効な歯の移動促進のための新規振動付与矯正装置を開発することを目的とする。平成29年度は、振動刺激が歯根吸収に及ぼす影響について検討するため、21日間の歯の移動実験後、圧迫側領域をSEMを用いて解析した。その結果、対照群および振動刺激単独群の歯根表面は滑沢なセメント質に覆われ、歯根吸収窩はほとんどみられなかった。これに対して、歯の移動群、歯の移動および振動群では、上顎第一臼歯の遠心口蓋根歯根表面の主に根分岐部付近に歯根吸収窩が観察されたが、歯の移動および振動群は歯の移動群よりも歯根吸収量は小さくなる傾向が示され、振動刺激は歯根吸収に影響を及ぼさないことが明らかとなった。また、in vitro における静荷重と振動刺激の作用メカニズムの解析のため、MLO-Y4に振動刺激を加え、位相差顕微鏡にて観察したところ、対照群と振動刺激負荷群で細胞形態に明らかな変化は認められなかった。さらに、RANKL発現の変化をリアルタイムPCRにより検討したところ、振動刺激1時間後において、対照群と比較して振動刺激負荷群にRANKL発現の有意な上昇が認められた。これらのことから、骨細胞がメカニカルストレスを受けた際の反応において、RANKLは振動刺激に対し、比較的早期に応答性を示す遺伝子である可能性が示唆された。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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