研究課題/領域番号 |
15H05054
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
永田 俊彦 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部, 教授 (10127847)
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研究分担者 |
成石 浩司 徳島大学, 大学病院, 講師 (00346446)
吉田 賀弥 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部, 講師 (60363157)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 歯周病 / 糖尿病 |
研究実績の概要 |
糖尿病患者の歯周病は重症化することが知られているが(糖尿病関連歯周炎),その病態機序は不明である。本研究の目的は,最終糖化蛋白AGEsを標的として,糖尿病関連歯周炎の重症化機序を臨床・基礎研究の両面から解明し,その成果を将来の診断システムの向上および確立に役立てることである。平成27年度には以下の成果を上げた。 ★基礎研究:1.口腔上皮細胞におけるAGEsの影響を遺伝子発現レベルで解析した結果,AGEsは口腔上皮細胞における炎症性サイトカインIL-1β,IL-6遺伝子発現を誘導した。特に,IL-6遺伝子発現はPorphyromonas gingivalis由来LPSとの共刺激によって相乗的に亢進した。また,逆にS100A8,A9遺伝子発現はAGEs刺激によって減弱した。2.高グルコース条件で培養した歯肉線維芽細胞をIL-6+sIL-6Rで刺激すると,通常グルコース濃度のそれと比較して蛋白分解酵素MMP-1の産生が有意に亢進した。同様の実験系において,カルプロテクチンも同じく高グルコース条件で培養した歯肉線維芽細胞のMMP-1産生を有意に亢進した。 ★臨床研究:1.臨床研究の実施について,本学の倫理審査委員会の承認を得た(N0.2325)。2.歯周病患者の歯肉溝滲出液(GCF)中のsIL-6Rおよびカルプロテクチンが測定可能であることを確認し,本研究の炎症マーカーの候補として適当であると評価した。歯周病患者の炎症部位におけるGCF中のsIL-6Rおよびカルプロテクチン濃度は有意に高かった。また,炎症部位におけるカルプロテクチン濃度は,患者の生体AGEs濃度と有意な正の相関を示した(P=0.044,r=0.59,Spearman解析,N=16)。一方で,生体AGEsの濃度はHbA1cや随時血糖値の数値と相関していなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基礎研究:歯肉線維芽細胞および口腔上皮細胞に着目し,それぞれ高グルコース条件下での培養およびAGEsによる刺激において,各種炎症性サイトカインおよび蛋白分解酵素の産生が亢進することを見出した。この研究結果は,糖尿病関連歯周炎の重症化機序を解明するための貴重なエビデンスになり得る。 臨床研究:本学倫理委の承認を得た後,対象患者の生体内AGEs量の測定を行い,各種歯周病パラメーター(一般臨床指標に加えて,生化学マーカーとしてGCF中のsIL-6Rおよびカルプロテクチンの有効性を予備検討し,それらの炎症指標としての正当性を確認した。)との統計学的関連性の有無を検討中である。引き続き,サンプルサイズの拡充に努める。
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今後の研究の推進方策 |
基礎研究:歯肉線維芽細胞および口腔上皮細胞は歯周組織の構築細胞であるので,マクロファージなどの炎症関連細胞の動態にも着目し,それらの細胞間クロストークの可能性を探ることで,さらに深く糖尿病関連歯周炎の病巣内で繰り広げられている病態カスケードを明らかにする。特に,臨床研究との関連性を高めるために,sIL-6Rおよびカルプロテクチンによる細胞間クロストークの制御について様々な観点からエビデンスを得る。 臨床研究:さらにサンプルサイズの拡充に努め,横断研究で得られるデータ解析の信憑性を高める。特に,糖尿病患者に対して研究協力の同意を得ることで,生体AGEs量と糖尿病関連検査値(随時血糖値およびHbA1c値)との間に,統計学的な正の相関が得られるようにデータ整備に努める。その他,基礎研究で糖尿病関連歯周炎の病態に関連し得る他の炎症マーカーの存在が明らかになった場合は,同様の実験系において,そのGCF中の濃度を測定することで,将来の診断システムに組み入れる可能性についても評価する。
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