研究課題/領域番号 |
15H05057
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
久保庭 雅恵 大阪大学, 歯学研究科, 准教授 (00303983)
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研究分担者 |
竹内 洋輝 大阪大学, 歯学研究科, 助教 (40572186)
関根 伸一 大阪大学, 歯学部附属病院, 講師 (70506344)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 口腔細菌叢 / エコロジカルシフト / Streptococcus gordonii / Porphyromonas gingivalis |
研究実績の概要 |
本研究においてはS. gordoniiをモデル菌種として採用し、同菌と仲介菌F. nucleatumの代謝を介した相互作用に重要な役割を果たすアルギニン/オルニチントランスポーターであるArcD、および異菌種間シグナル伝達分子産生酵素luxS、cbe等を標的分子とし、多菌種よりなる口腔バイオフイルムモデル中で標的遺伝子を確実にノックアウトする技術を確立すること、また、これらの遺伝子ノックアウトが、多菌種よりなる細菌叢の構成菌種プロファイルおよび菌叢全体の代謝プロファイルに及ぼす影響を検討することを目的としている。 これまでに、まずS. gordonii ArcDの機能不全が口腔細菌叢代謝プロファイルに及ぼす影響の検討を実施した。共焦点レーザー顕微鏡を用いた観察により、arcD遺伝子のノックアウト株で、仲介菌F. nucleatumとの混合バイオフイルム形成能が低下していること、またその現象が、S. gordoniiがarcDを介して環境中に放出するオルニチン放出量の低下に起因することを確認した。 次に、S. goroniiコリスミ酸結合性酵素(Cbe)の生成物であるpABA(パラアミノ安息香酸)のシグナル伝達分子としての役割を詳細に検討した。その結果、pABAを受け取った歯周病菌P. gingivalisにおいて、トランスクリプトーム、プロテオーム、およびメタボロームプロファイルが大きく変動し、バイオフイルム形成能が高まる一方、病原性は低下するという現象が観察された。平成28年度には、この現象をマウスモデルを用いて確認する一方で、University of Texas との共同研究により、n数を増やしたプロテオーム解析を再度実施し、再現性を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トランスオミクスの手法を駆使し、S. gordonii由来の各種代謝物質が歯周病原性細菌叢に及ぼす影響についての解析は順調に進められている。 臨床サンプル由来の細菌叢の菌種プロファイルを可及的に保存しつつ、長期培養を可能とする培地については引き続き至適化を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、S. gordonii由来のpABAによって病原性の低いバイオフイルム状態となったP. gingivalisが、S. gordoniiと歯周病関連菌との相互作用によって産生される代謝物質によって再度プランクトニック化し、病原性を亢進させるメカニズムについて検討する。 また、RNA誘導型ヌクレアーゼシステム(RGN)をコードするpRGNプラスミドを利用した、初期付着菌S. gordonii 標的遺伝子ノックアウト手法の確立も順次進める。
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