研究課題
本研究においてはS. gordoniiをモデル菌種として採用し、同菌と歯周病関連菌F. nucleatumや歯周病菌P. gingivalisとの菌種間相互作用に重要な役割を果たすアルギニン/オルニチントランスポーターArcD、シグナル伝達分子を産生する酵素luxS、cbe等を標的分子とし、多菌種よりなる口腔バイオフイルムモデル中で標的遺伝子を確実にノックアウトする技術を確立すること、また、これらの遺伝子ノックアウトが、多菌種よりなる細菌叢の構成菌種プロファイルおよび菌叢全体の代謝プロファイルに及ぼす影響を検討することを目的としている。これまでに、S. goroniiコリスミ酸結合性酵素(Cbe)の生成物であるpABA(パラアミノ安息香酸)のシグナル伝達分子としての役割を詳細に検討した。その結果、pABAを受け取った歯周病菌P. gingivalisにおいて、バイオフイルム形成能が高まる一方、病原性は低下するというユニークな現象が観察された。平成29年度は、pABAによって病原性の低いバイオフイルム状態となったP. gingivalisの菌体内代謝変動を詳細に分析した。その結果、pABAの取り込み開始後30分の時点では、メチオニン代謝経路、ヒスチジン分解経路、核酸合成経路が活性化し、シグナル伝達物質であるAI-2の産生やピリミジン産生が亢進するが、その後THF-グルタミン酸サルベージ経路が稼働すると、これらの代謝経路が抑制されるという代謝変動が推察された。さらに興味深いことに、pABAを作用させたP. gingivalisでは、トランスケトラーゼの発現量が抑制されることでビタミンB6(Pyridoxal phosphate;PLP)の産生量が低下し、ポリアミン産生酵素群をはじめとするいくつかのPLP依存性酵素の生成物が顕著に減少していることが明らかとなった。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2017 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
Nature Microbiology
巻: 2 ページ: 1493-1499
10.1038/s41564-017-0021-6
https://naturemicrobiologycommunity.nature.com/users/62269-richard-lamont/posts/20394-sit-down-and-be-quiet