本研究は、看護師が主体的に早期離床を安全に行うために必要な科学的評価指標を得ることを目的に、手術を受ける患者の年齢、性別、既往歴、術中の状況等を考慮した離床プログラムの開発を目指し、周手術期の看護援助に寄与することを最終的な目標として研究を開始した。全身麻酔が自律神経活動に与える影響について評価した先行研究は少なく、また離床という看護援助について患者はもちろんのこと健康成人を対象としたコントロールとして使用できるデータもなく、本研究は健康成人を対象とした体位変換における自律神経活動を評価することから開始し、当該分野として先駆的な検証となった。また、これまで成人期における自律神経活動は、女性は男性に比べて副交感神経活動が高く、交感神経活動は逆に女性よりも男性が高いことが知られている。本研究では性別も考慮して評価を行なったが、仰臥位から側臥位時への体位変換で性別による心拍数の変化が生じることが確認でき、離床時においても対象の性別を考慮する必要性のある可能性を示唆できた。仰臥位から右側臥位時への体位変換では年齢が高くなると、男性の交感神経活動が低下する傾向を示し、心拍数が減少を示した。これまでわれわれは、高齢者の体位変換時の自律神経活動の変化も評価しているが、平均年齢75歳の高齢者で右側臥位が左側臥位に比較して、心臓の交感神経活動、迷走神経活動のバランスを調整できる可能性を見出しているが、本研究の対象者も同様の傾向を示すことが明らかになった。
|